>> 2 「話いうんはそれだけですか?香奈が浮気なんてするはずありません。帰ってくれませんかね」 ボクは女を帰らせようとした。 せやけど、この女…泣き出してしもた。 「私…どうしたらいいかわからないんです…真子がずっと香奈さんのことを思っていたのは知っていました。彼女以上のボーカルなんていないっていつも言っていましたから。でも、それでも…」 今、この女何て言うた? 香奈以上のボーカル?何の話や。 「キミ…何か勘違いしてんのと違います?ボーカルやなんてそんな…」 「市丸さんは何も聞かされていないのですね。真子が学生時代に組んでいたバンドのボーカルは香奈さんですよ?」 decideのボーカルが香奈いうこと? 何や…頭がこんがらがってきた。 「…っすみません、余計なことを…」 女は逃げるように店を出て行った。 何や…ボクは香奈のこと何も知らんかったんや… 「ご免な、今日は遅くなりそうや」 『うんわかった』 思わず香奈に電話してもうた。 信じてないわけやない。 せやけど、やっぱり不安なんや。 もし本当に香奈と平子サンが昔付き合うてたんやとしたら、ボクよりはるかに長い時間を一緒に過ごしていたわけで。 よくある話やないか。 昔の恋人と再会してヨリ戻すいう話。 まだ幼かったボクとは違う。 「何やの、もう…」 額に手を当てて俯くボク。 ボクってこないに弱い男やったんやろか。 気になるんなら香奈に聞けばええだけの話やのに。 「オーナー、どうかされたんですか?」 「イヅルか。何でもないわ…ちょっと疲れただけや」 今夜は飲みにでも行こか。 一人で行くのも嫌やし、アイツでも誘お。 prev//next back |