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「そうか…仕方がない、お前らはしばらくFaustに専念しろ」

「はぁ〜い!」



若干の怒りを含んだ顔で乱菊を見る香奈を他所に、夜は更けていった。
それからというもの、香奈はFaustのデビューの準備に奔走していた。
なるべくメンバーに会わないでいいように、メンバーとの打ち合わせはほとんど乱菊に任せていた。



「香奈、今日一緒に行けなくなっちゃった!」



手を合わせる乱菊に香奈は溜息をつく。



『いいよ、Faustでしょ?』

「うん、本当は香奈も連れて来いって真子に言われてるんだけど…行かないんでしょ?」

『わかってるでしょ?』



香奈は仕事以外では決して真子に会おうとはしなかった。
今日のような飲み会には一度も顔を出していなかった。



「全く…過去だって言ってるくせに」



香奈の気持ちを汲んでか、乱菊も無理に誘うことはなかった。



『久しぶりに料理でもするかな…』



会社からの帰り道、普段はしない料理をしようと思い立ち近所のスーパーに立ち寄る。
何を作ろうかと悩んでいると、ふいに後ろから声をかけられた。



「香奈!」



振り向くと、ギンがこちらに手を振っていた。



『ギン、夕飯の買い物?』

「そんなところや。出来合いのもん買うだけやけどな」



香奈と同じく普段は料理をしないらしいギン。
香奈はあることを思い立った。



『良かったら、何か作ってあげようか?一人分作るのも大変だし』

「ええの?香奈の手料理食べれるやなんて嬉しいわァ〜」



素直に喜んでくれるギンに思わず香奈の頬が緩む。
二人は買い物を済ませるとギンの部屋へと向かった。



「何作ってくれるん?」



料理を始めた香奈の後ろに立ち、ギンが覗き込む。



『カレー。これなら此処に置いておけばギンがまた食べれるでしょ?』

「ほんまに!?香奈は優しいなァ〜」



終わるまで向こうに行っててと言われ、ギンはリビングに戻る。
そこでふとあるCDを手に取る。



「音楽かけてもええ?」

『いいよー』



香奈にいいと言われ、ギンはそのCDをデッキに入れる。



「この曲な、ボクが一番好きな曲なんや」



再生ボタンを押して流れてきたのは…



「このバンドな、ボクが東京出てきて友達に聞かせてもろうたんや。予定が合わんで一度もライブには行けへんかってんけど…」



残念やったなァ〜と言うギンの声も耳に入らず、香奈は野菜を切っていた包丁を握り締めたまま立ち尽くしていた。



「名前はdecideいうんや。なんでも、そこのボーカルの女の子がえらい可愛いかったらしゅうてな…って香奈?」

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