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しかし、来るべくして終わりは訪れた。
香奈たちが四年になり、卒業を迎えたのだ。
メンバーは皆同じ大学の学生だった。
拳西は教師になるために地元へ帰り、ローズは研究を続けるために大学に残ることになっていた。
そして香奈はレコード会社の内定をもらっていた。



『真子はどうするの?就活してなかったけど…』



皆が卒業後の進路に向けて活動する中、真子は一人、ギターを弾き続けるだけだった。
香奈はそんな恋人の姿に不安を抱いていた。



「香奈、俺プロになろう思ってんねん」

『プロ!?』



香奈が驚くのも無理はなかった。
今までdecideとして活動していた間に何度か誘いを受けたのだが、真子がずっと断っていたのだ。



『だって、真子はプロになる気はないって…』

「それはdecideとしてや。皆には目標があった。それを諦めさすんは嫌やってん」



真子がずっとプロ入りを断っていた理由。
それは香奈たちメンバーのことを思ってだった。



『でも、今からまた一からメンバー探してって大変でしょ?』

「大丈夫や。せやけど香奈、待っててくれへん?」

『待つって…』



香奈は真子のほうを見た。
真子はいつものおちゃらけた表情が嘘のように真面目な顔をして、香奈に言った。



「俺がちゃんと音楽で食っていけるようになるまで、や。そしたら香奈迎えに行く」



卒業式の次の日、decideの解散ライブの終わった夜のことだった。
そして、真子は香奈の前から姿を消した。



『で、今に至るってわけ。アイツは私の男嫌いの元凶ね』



一通り話し終えた香奈は煙草に火をつける。
乱菊は今聞いた話が信じられないといったような表情をしている。



「アンタ、まさかそれで煙草を?」

『いや、これは昔から。アイツが吸ってたのを貰ったのが最初』



そう言って香奈は恨めしそうに煙草の箱を見る。



「decideって私も知ってるわよ!?まさかあのボーカルがアンタだったなんてねえ…」

『昔の話だって言ってるじゃない。今はもう歌なんて歌えないよ…歌う気もないし。誰にも言わないでよ?』

「はいは〜い!」

『昔の話なんだから…』



そう言った香奈の顔は憂いを含んでいた。





本当は、あの時ついていきたかった。
“ずっと傍に居る”そう言ってくれたあの人に。
まだ幼すぎて別れを選ばざるをえなかったあの少年と似た、関西訛りで紡がれたその言葉を信じたかった。
でもそれは過去……再会は遅すぎた。


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