>> 2 夏休みだということもあり、バンドはすぐに活動を始めた。 真子の集めたメンバーは経験者、しかもかなりの腕利きばかりで、バンドは結成してわずか二ヶ月で初ステージを迎えた。 その前夜。 『明日、だいじょうぶかな…』 「なんや、緊張しとるんか?」 真子の部屋に来ていた香奈はポツリと不安をもらす。 『だって、初めてステージで歌うんだよ?緊張もするって』 「大丈夫や。俺がついとる」 『真子が居てもねぇ〜』 ふふっと笑う香奈の体を、ふいに温かいものが包んだ。 『真…子?』 「大丈夫や、俺が香奈の傍に居る。ずーっとな」 香奈の頭を過るのは、いつか言われた言葉。 真子はふっと香奈から離れると、両手で香奈の顔を包み込み唇に触れた。 「好きや。初めて会うた時からずっと」 突然の真子の言葉にどうしていいかわからない香奈。 あたふたとしていると、真子にまたぎゅっと抱きしめられた。 「香奈は嫌いなんか?俺のこと…」 『そ、そんなことない!……………好き』 翌日、香奈たちのバンドは無事に初ステージを終えた。 反応は思っていた以上によく、その後もコンスタントに活動を続けた。 「なあ、俺らのCD作らねえ?」 『CD?』 言い出したのはドラムの拳西。 活動を始めて半年が過ぎた頃だった。 「ええんとちゃう?ライブで売り出したら売り上げは儲けになるしなァ〜、ローズもそう思うやろ?」 真子が同意を求めたのはベースの楼十郎。 皆からはローズと呼ばれている。 そのローズも頷くと、CD製作の話はどんどん進んでいった。 「ジャケットは俺がデザインしてええ?こういうん好きなんや」 さっと紙とペンを取り出すと、真子はさっとデザインを完成させた。 「これでええやろ。“decide”のロゴも作ったで」 “decide”とは、真子がつけたバンド名だ。 このdecideのCDはライブでは飛ぶように売れ、いつしか真子たちのバンドはこの界隈では知らない人がいないくらい有名になっていた。 prev//next back |