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「だいたいなァ〜“棄てた”ってなんやねん、人聞きの悪い。俺は香奈んこと棄てた覚えなんてないで?」



真子は溜息をついて話し出す。



『何言ってんの?勝手に消えたのはそっちじゃない』

「消えたんやない、迎えに行く言うたやろ?」



漸く落ち着きを取り戻した香奈だが、その表情は変わらない。



『“迎えに行く”なんて言われて、もう何年経ったと思ってんの?』

「えっと…三年?」



指を折りながら、真子が答える。



『そうよ、三年。それだけ経てば棄てられたも同然よ。ね?』



香奈は乱菊に同意を求める。
いきなり話をふられ、どうすればいいかうろたえていた。



「松本サン困っとるやないか。とにかく俺はお前を棄ててなんかない。まだお前のこと好きやし」

「『はぁ!?』」



あっさりと紡がれた言葉に、香奈と乱菊は間抜けな声を出した。



「何を驚いてんねん。俺は今でも香奈のこと好きやし、香奈以上のボーカルがいるとも思ってへんねんで?…かといってFaust辞める気もないねんけどな」



へらへらと笑う真子に乱菊は思わず聞き返す。



「ボーカル!?アンタ歌ってたの?」

『そんなの昔の話よ。とにかく、ウチに所属してくれるならそれでいいじゃない』



香奈はさっと話題を変え、三人は仕事の話に入った。



『それでは、詳しい話はまた後日ということで。お時間とらせてすみませんでした平子さん』

「なんや、真子でええっちゅうねん…」



香奈は話が終わると乱菊を連れてさっさと店を出た。



「香奈!さっきの話はどういうこと!?」



乱菊の言う話とは、先ほどの真子の話のことだろう。
香奈はゆっくりと話し始めた。

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