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ギンに案内されて店の奥に入る美空。
コーヒーを手にギンは笑う。



「香奈は気付いとるとばっかり思うとったわ」



そう言って指差す先には香奈の耳に光るピアス。
香奈はこのブランドのアクセサリーをいくつか持っていたのだ。



『バンド名聞いた時、メンバーが好きなのかなとは思ったけどさ』

「でも嬉しいわァ〜香奈がボクがデザインしたん着けてくれとるなんて」



香奈は目の前にいる男をじっと見る。
整った顔立ちにすらりと伸びた手足。
おまけに人気ブランドのデザイナーとくれば、女はいくらでも寄ってくるだろう。



「ボクの顔に何か付いとる?」



香奈の視線に気付き、自らの顔をぺたぺたと触る市丸。
その様子がおかしくて、香奈は思わず吹き出してしまう。



「なんやの、人の顔見て…」

『ごめん、ギンってモテるんだろうなと思って』



ふて腐れるギンに香奈は先程思ったことを口にする。



「まあ、モテへんことはないよ」

『うわっ、自慢?』

「事実を言うたまでや。そんなん言うて香奈こそモテるやろ?」



こないに綺麗になって…と香奈の頬に手をやるギンに、香奈は思わずドキッとする。



『まあ、モテないことはないけどね』



ギンの手を払いのけ、香奈はニヤリと笑みを浮かべる。



「そんならお互い様や。香奈、手貸してみ?」



ギンに言われて右手を差し出すと、ギンは何やら測りだした。



『何か作ってくれるの?』

「せや。香奈にプレゼントしたろ思うて」

『もう…いろんな女の子にこうやってプレゼントしてるわけね?』



クスクス笑いながら、香奈はギンを見る。
しかし、ギンの表情は暗い。



「香奈…………や…」

『何か言った?』



よく聞き取れなかった香奈はギンに聞き返す。



「何でもない。よし、サイズはわかったし、飯でも行こか」



ギンに言われ、少し遅い昼食をとった二人。
次の日は仕事で朝早いため、そのあと香奈は家に帰った。



「香奈、また部屋行ってもええ?」



帰り際、ギンが香奈にぽつりと尋ねた。



『いいよ。どうせ他に来るような人もいないしね』



別段断る理由もなかった香奈は快く了承した。



『じゃあまたね』



ギンの部屋の一つ上の階に済む香奈は、エレベーターで別れを告げた。

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