第一印象は最悪。
一言目に殺す、と言われた。
目の前に突きつけられた鋭い刃。
それが放っていた鈍い光を今でもまだ覚えている。
私はただ仲間になりたかっただけなのに。



「本当にこんな子を入れて大丈夫なんですか?」
「総司、お前も見ただろ。アイツは戦力になる、そう判断したまでだ」
「ふうん……」



第一印象は、一カ月経っても変わることはなかった。
新選組という名を聞いて壬生の屯所へと足を運び、入隊させてくれと頭を下げたのが一月前。
最初は女は置けないと断られたが、副長と言われる男に刀を向けてやれば意外とあっさり入隊を許可された。



「玲、土方さんが呼んでるぞ」
『はーい』



生ぬるい返事をして、副長の部屋へと向かう。
新選組に入ってもうどれくらい経つのだろう。
今ではすっかりこの組織にも、慣れなかった男装にも馴染んでいる。



『失礼します』



声をかけて部屋の中に入れば、部屋の主は背筋をぴんと伸ばして机に向かっていた。
私が入ってきたことで振り向けば、横髪が目にかかって何とも綺麗だ。
言ったら怒られるから口にはしないけど。



「お前、総司のことは嫌いか?」
『は?』



突然の問いに首を傾げる。
好きか嫌いかで聞かれれば、答えはどうでもいい。
答えになっていないと自分でも思うけれど、実際彼のことを好きか嫌いかで判断できるほど親しくないのだ。



「お前を一番組に入れようと思ってる」
『何でまた』
「総司がそうしてほしいと言ってきた」



沖田さんが私を?
そもそもそんなに会話したこともないし、私の中での彼の印象といえばいつも土方さんをからかって、すぐに殺すとか物騒なことを口にする人、だ。



『土方さんは了承したんですか?』
「お前次第だな。玲がいいってんなら、すぐにでも一番組に入ってもらう」
『副長命令なら逆らいませんよ』
「命令じゃねえ、お前の希望を聞いてんだ」



鬼の副長が珍しい、と思った。
わざわざこんなことを言ってくるのだから、きっと彼にも思うところがあるのだろう。
それでも。



『いいですよ、沖田さんのところに行きます』
「そうか、総司!聞いたか!」



土方さんの声と共に、襖が開いて沖田さんが顔を覗かせた。
はあ、と溜息を吐く土方さんと、いかにも楽しそうといったような表情の沖田さん。
私には何がなんだかわからない。



「これからよろしくね、玲ちゃん」
『よろしくお願いします』



差し出された手を躊躇いがちに取れば、がっちりと握られた。
彼の第二印象は、子供みたいに純粋に笑う人。


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