街中を彩る無数の光。
眩しいくらいに輝く光達は、まるで夜であることを拒むかのよう。



「綺麗だな」



一際目立つ大きな木を見上げれば、あまりにも明るいイルミネーションの所為で普段その木越しに見える月は身を潜めていた。
今日は主役を譲ると言わんばかりに。



「一くんってクリスマスとか嫌いそうだけどねえ」

「クリスマスというのはどうも好きにはなれん。異国の祭りではないか」



一くんらしいや、といつもの笑みを浮かべるこの男は、俺の友人……いや、腐れ縁だ。



「それにしてもさあ、なんでこんな日に一くんと二人でこんなところに居るわけ?外国ではどうか知らないけどさ、日本ではクリスマスってのはカップル同士でいちゃつくもんじゃないの?」

「煩い。俺とて男と二人でイルミネーション見物をする趣味などない」



今日こうして総司と街に出てきたのには理由がある。
俺の尊敬する人に呼び出されたからだ。
そうでもなければこんな人の多い日に街になど出るものか。



「総司、斎藤!久しぶりだな」



遠くから自分達を呼ぶ声が聞こえて、見慣れた三人が姿を現した。
左之、新八、平助。
この者達も旧知の仲だ。



「ったくよお、クリスマスに呼び出しなんて土方さんも酷いよなあ。俺にだって用事があるっての!」

「何だ、彼女でもできたのか?」

「止せよ、新八。平助が惨めになんだろ」

「惨めってなんだよ左之さん!自分がモテるからってー」



どうやったら、こういつもいつも騒げるのだろう。
毎度のことながらこの三人には呆れる。
そうこうしていると、俺達を呼びつけた張本人が姿を現した。



「待たせたな、行くぞ」



その人はいつもと変わらない様子で、街を彩るイルミネーションに目をくれることもなく歩みを進めた。



「土方さん、今日はなんで僕達を呼んだの?あ、クリスマスを一人で過ごすのが寂しかったとか?」

「総司、いいから黙って付いてこい」



俺達は今日何故呼ばれたのかを知らされていない。
一週間前に土方さんから送られてきた短いメール。
24日は空けとけ。
たったそれだけの言葉で俺達はこうして集まった。
一般的には総司の言うようにクリスマスというのはカップルで過ごす者が多いのだろう。
それでもこうして皆が集まったのは、一重に土方さんの人望のなせる業だろう。



「ここだ、入れ」



土方さんに連れて来られたのは、こじんまりとした店だった。
中に入ると、既に二人の客がカウンターで酒を飲んでいた。



「皆、よく来てくれたな」



振り返った二人は俺達のよく知る人だった。
近藤さんと山南さん。



「今日は皆でクリスマスパーティーをしようと思ってな!久しぶりにいいだろう!」



目を輝かせる近藤さんを見て、土方さんは溜息を吐く。
あのメールは近藤さんに頼まれた土方さんが渋々送ったものなのだろうと、恐らくそこにいた皆は思ったに違いない。
なにはともあれ、近藤さんの音頭で男だらけのクリスマスパーティーが始まった。

とは言っても、クリスマスとは名ばかりで中身はいつもの飲み会だ。
盛り上がってきてさらに騒がしくなった店内に、カランという来客を知らせる音がした。


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