『ここです』



彼女の指さす先にあるマンションが、どうやら彼女の家のようだ。
此処まで来れば特に危険もないだろうと思い、俺はそれじゃあと彼女に背を向けようとした。



『斎藤さん!』



彼女の声に振り向けば、にっこりと笑った彼女がこちらを見ていた。



『今日はありがとうございます、とっても楽しかったです。もしよかったら、また一緒にお話ししましょうね!』

「ああ、俺も楽しかった。俺からも礼を言う、玲」



大きく手を振る彼女に見送られながら、一人家へと向かった昨年の12月24日の夜。



「また今年もパーティー?全く土方さんも好きだよねえ」

「総司、これも土方さんの近藤さんへの気遣いだ」

「でさあ、なんで一くんが居るの?」



しかも女連れで、と付け加える総司に玲はクスリと笑う。



『私も誘われたんですよ、土方さんに』

「玲ちゃんがいるのはいいんだけどさ、一くんが居ると話させてもらえないんだよね」

「総司が余計なことを吹き込むからだ」



そんな俺達のやりとりを見る玲は終始笑顔だ。
一週間前に土方さんから俺達二人に届いたメール。
昨年のものとは少し違った。



「全員揃ってるな、行くぞ」



やってきた土方さんに連れられて、昨年と同じ店へと向かう。
店の中に入れば昨年と同じように先に来ていた近藤さんと山南さん。



「斎藤君、玲君、おめでとう」

「不思議なものですね。今年もこうして集まることになろうとは」



いつものように朗らかな笑顔の近藤さんと、人の良さそうな笑顔を浮かべている山南さん。



「にしてもなあ、斎藤が玲ちゃんとねえ……」

「そうだよなあ、意外!」

「そうか?俺はお似合いだと思うけどな」



口々に騒ぎ立てている面々も、俺達のことを祝福してくれているのだろう。



「玲、斎藤のことよろしくな」

『はい、もちろんです!』



玲の頭に手を置いて微笑む土方さんは、恐らく彼女のことを妹のように思っていたのだろう。



『なんだか嬉しいですね、一さん』

「そうだな。有難い」



俺の横ではにかむ玲の手には、先日俺が送った指輪が輝いていた。
街中を彩るイルミネーションに負けないくらいに。



END


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