私は兄貴が大ッ嫌いだ。
死神になってからというもの、この苗字のせいであの馬鹿の妹だとすぐにバレた。
そう、あれは兄貴がまだ蛆虫の巣に居た頃。



「涅、お前の兄貴って昔やべえことやってたんだろ?」



まただ。
何度同じ事を聞かれたことか。
私がまだ死神になる前、ある日突然姿を消した兄貴。
知り合いの死神に聞いたら”脱退”したと言われた。



「知るか。私はあんな馬鹿知らない」
「それにしても、お前の兄貴どこに行ったんだろうな〜。突然消えちまって」



瀞霊廷の何処を探しても兄貴は居なかった。
あの馬鹿が死ぬとは思えなかったが、きっとどっかでのたれ死んでいるのだろうと思っていた。



「涅〜、十二番隊に行ってきてくれへん?」
「苗字で呼ばないで下さいと何度言ったらわかるんですか、平子隊長?」



数十年後、私は死神となり五番隊に所属していた。



「藍染副隊長も何か言ってくださいよ」
「隊長、夜君をからかうのはそろそろやめたらいかがです?」
「惣右介には関係ないっちゅうねん。
ほら、さっさと行きや。」



隊長に書類を渡され、私は仕方なく十二番隊へと向かった。



「失礼します」



どうぞ〜と気の抜けたような声がして、隊首室へと入る。



「五番隊の涅です。書類を届けに来ました」
「ご苦労様です、涅…サン!?」
「はい、私は涅夜ですがそれが何か?」



目の前に居るこの男の名は浦原喜助。
先日十二番隊隊長に就任したばかりだ。



「涅って本名ですよね?」
「何故わざわざ偽名を使う必要があるんですか。それと、私のことは夜と呼んでください」



何かを考えるような素振りを見せる浦原隊長。
書類は届けたし、さっさと帰ろうと思い隊長に背を向ける。



「待ってください、夜サン!」
「何ですか?」
「もしかして、涅マユリサンの妹サンですか?」



ああ、またいつものか。
溜息をつき、私は頷く。



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