虚圏、闇に浮かぶいびつな形の月を見ながら一人の男が呟く。



「なあ夜…ボクのこと許してくれるか?夜に何も言わんとこないな遠くまで来てしまったボクのこと…」



その問いかけに答える者はいない。



「でもな、ボク夜のこと手放す気なんてあらへん…嫌や言うても連れてくるさかい…」



その時、男の顔に笑みが浮かんだ。
視線の先には愛しい人。



「夜!もう元気になったんやね。どうやって此処に来たん?」



男は女のほうへと駆け寄っていく。
その様子を痛々しい目で見ている男が一人。




「すまないね…ギン」



男の手に刀が戻る頃には、女の姿は消えていた。



END



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