「師匠の……」 どうやら彼は知らないみたいだ。 私が滅却師の研究に関わっていたことを。 もしかしたら浦原さん辺りにでも聞いてるんじゃないかと思っていたのだけれど。 「貴方の御爺様、石田宗弦を看取ったのは私よ」 ほら、驚いている。 だんだんと表情が怒りに満ちたものへと変わっていく。 「貴女が……師匠を殺したのかい?」 「正確には私じゃない。でも、研究に携わっていたことは確かよ」 言い終わる前に彼は私を壁に押し付けた。 首に手を掛けられてはいるけれど、所詮は人間。 力をなくした滅却師が私に勝てるわけがない。 私はただじっと怒りに満ちた彼の目を見ていた。 「……んだ……」 「何?」 「どうして見殺しにしたんだ!」 彼は私の首にかけた手に力を込めた。 でも駄目、そんなんじゃ殺せない。 「手、震えてるじゃない」 ← back |