「なんや、お前の兄貴意外とええ奴やんけ」



ケラケラと笑う平子隊長を睨みつけていると、藍染副隊長に宥められた。
全く、これから私はどうなってしまうのだろう。



「隊長が消えた!?」



それから九年ほど経った頃だった。
朝、詰所に行くと大騒ぎになっていた。



「なんでも、浦原隊長も追放になったらしいよ」
「嘘でしょ…」



五番隊は藍染副隊長が居るから何とかなるとして、十二番隊は隊長も副隊長も居なくなったのだ。
まさか、三席の兄貴が?



「そうだ、十二番隊の新しい隊長は君のお兄さんで決まったらしいよ」



にこやかに藍染隊長に言われて、私は言葉を失った。
いやいや、あの男に隊長なんて務まるはずがない。
そもそも隊首試験って人格とかも見るんじゃないの?
ああ、あれは人格が崩壊しているとかいうレベルじゃないからな…



「藍染隊長…一つだけお願いしてもいいですか?」
「なんだい?」
「私、絶対に十二番隊にだけは行きたくないので、もし万が一向こうから要請があっても断ってくださいね?」



わかったよ…と苦笑する藍染隊長が後に兄貴に屈することになったのはまた別のお話。



「あームカつく!」
「どうしたんだい?いきなり…」



横を歩いていた弓親が不思議そうな顔で私のほうを見る。



「あの馬鹿のこと思い出したらムカついたの!何か文句ある?」
「涅隊長のことか。いいじゃない、夜愛されてるし」



ニヤニヤしながら言う弓親がこれまた気に入らない。
弓親を睨みつけると、にっこりと微笑まれた。



「あの…涅副隊長イメチェンしたんですね?」



後ろから声をかけられ振り向くと、どこかの隊の隊士が私をネムだと勘違いして話しかけてきた。
弓親は必死で笑いを堪えている。



「ああ!?私がネムだって?てめえ殺されたいみてえだな…」



すっと刀に手をかけると、慌てた弓親に抑えられた。



「夜、危ないから!君も、この子は涅副隊長じゃなくて涅夜だよ。間違えると殺されるから気をつけてね」



弓親は急いで私を抱えてその場を去った。
全く、いいかげんにしてほしい。
ネムと間違えられないように髪を下ろしてるっていうのに。



「兄貴なんて大っ嫌いだーーーー!」



私の叫びは今日も瀞霊廷に響き渡った。



END



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