「お兄さんに…会いたくありませんか?」



浦原隊長に告げられたのは衝撃的な言葉だった。
会いたいとか会いたくないとかいう以前に、あの馬鹿はまだ生きているのか?
混乱している私の様子に気づいたのか、浦原隊長は返事も聞かずに話し出した。



「お兄さん、マユリさんは生きています。表向きは脱退ということになっていますが、本来は護廷にそんな制度はありません。マユリさんは今蛆虫の巣に居ます」
「蛆虫の巣?」



噂では聞いたことがある。
異端分子を収容する施設か何かだと。



「はい。僕は以前そこの管理を任されていました。そして、近々新しく作る技術開発局にマユリさんを迎えようと思っています」



技術開発局ということは研究施設だろうか?
昔から怪しげな実験をしていた兄貴には願ってもいない職場だろう。



「そうですか。あんな兄でも必要としてくれる方が居るなら私も安心です」



この浦原隊長も相当な変わり者なのだろう。
あの馬鹿兄貴を部下になど、私だったら絶対にご免被りたい。



「それでですね…夜サンにも技術開発局に来て欲しいんですが…」
「はぁ!?」



思わず間抜けな声を出してしまった。
私に兄貴と同じ職場で働けと?
冗談じゃない。



「あの…正気ですか?」



だいたい、私はただの死神だ。
わざわざ隊長自ら技術開発局とかいうところに誘うほどの人材ではない。



「正気っスよ。以前マユリサンから貴女のことを聞いたんです。なんでも実験が大好きなそうで」



そう言って浦原隊長はにっこりと私に笑みを向けた。
あの馬鹿はつくづく私を困らせてくれるようだ。
確かに、私は昔から研究が好きだった。
実を言うと、今でも部屋の中は人を入れられないような状態になっている。



「嫌です。兄と一緒に働くなんて虚に殺されるより嫌です」
「なにもそこまではっきり断らなくても…」



苦笑する浦原隊長を背に、私は十二番隊を出て自隊へと戻った。
兄貴に再会したのはそれからすぐのことだった。



「よォ喜助、今日は三席も連れとるんやね」
「平子サン、おはようございます」



平子隊長と藍染副隊長と三人で歩いていると、十二番隊の面々に出くわした。
隊長の後ろに隠れて兄貴に見つからないようにしていたのだが、それは無駄だった。



「夜、何をしているのカネ?」
「あ、兄貴…」



私はあっけなく兄貴に発見され、ぽんと頭に手を置かれた。



「元気そうダネ。まあ、私の妹ともあろうものが簡単に死なれては困るからネ」



ニッと笑うと、兄貴は浦原隊長たちと去って行った。



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