―side阿近―



夜が出て行った後の部屋。
俺の手の中にはさっき夜が投げた紙袋。
中身はいつもの”アレ”だ。



「全くアイツも素直じゃねえんだから」



袋の中を覗き込む。
中には局長の好きな甘味処の菓子と手作りの弁当。
誰が作ったかって?
そんなの夜以外に居ねえよ。



「お前、なんでわざわざ弁当作ってくるんだ?」



いつだったか俺がアイツに聞いた時、アイツはいつものように煙草をふかしながら言ったんだ。



『だって、こうでもしないとあの馬鹿食事もまともに取らないでしょ?あんなのでも一応隊長なんだから、体壊されたらこっちが困る』



なんだよ、やっぱり兄貴のこと思ってんじゃねえか。
そう思ったけど、口に出したら殺されそうだからやめた。



「さて、局長のところに行ってくるか」



夜、お前は知らないだろ?
局長がこの弁当のために食事抜いてるってこと。
面白えから絶対に言わないけどな。
ついでにもう一個お前の知らないこと。
局長が蛆虫の巣から出てきた時に最初に言った言葉、何だと思うか?
”夜に会える!”だぜ。
俺も浦原元局長に聞いた時はびっくりした。
全く、お前ら兄妹も世話が焼けるよな。



技局を出て、十二番隊隊舎も出た私の目に入ったのは同じ十一番隊の弓親。
隊長が心配して迎えによこしたんだろう。
全く、自分が行かせといて何なんだっつうの。



「弓親、何してんの?」
「隊長に夜の様子を見て来いって言われてね」



やっぱり。
あんなでかい図体して、意外に心配性なんだから。



「そうだ、今日の夜は飲み会だからね」
「本当!?あ…でも僕今お金ないや」
「大丈夫、隊長が奢ってくれるって」
「じゃあ行く!でも、隊長が奢ってくれるなんて珍しいね」
「まあね。私の手にかかればちょろいもんよ」



私に頼み事した隊長が悪いんだから。
せっかくだから一角も乱菊も誘って…あ、京楽隊長も誘っちゃおうかな。
給料日前だし、痛い出費になるに違いない。
よし、今日は飲むぞ!
いや…今日もか。



END



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