―現世、空座町上空―
正確にはレプリカの空座町。



「なんや夜、結局こっちに来たんか」



いち早くその存在に気が付いたのは市丸ギン。
その開かれた瞳はどこか悲しそうだった。



『もうあっちは大丈夫だ。それに…』

「なんや?」

『いや、なんでもねえ』



夜はギンに微笑みかけると、すっとどこかへ消えた。



「全く…相変わらずやねえ」



呟くその声が届くことはなかった。
一方、夜の向かった先は乱菊と雛森のところ。
重傷の二人を吉良が必死に治療している。



『よっ、元四番隊』



必死に乱菊の治療にあたる吉良に、夜は声をかけた。
吉良は驚いて後ろを振り返る。



「夜さん!今までどこにいらっしゃったんですか!?」



細かいことはいいから、と苦笑いをして、夜はもう一人の重傷者、雛森の治療にあたる。



「夜さんも回復鬼道が使えるんですね」

『少しだけ、な。四番隊には敵わない』



そう言いながらも、少しずつ雛森の傷を癒していく。



「僕、ずっと気になっていたんです。夜さんは一体何者なんですか?僕達の味方かと思えば、あちらの人達にもどうやらそう思われているようです。正直、よくわからなくて…」



彼特有の困ったような表情で吉良は言う。
夜はふっと笑みを漏らすと、吉良のほうを向いた。



『だから、細かいことは気にすんなって。私はどっちの敵でもない、それだけだ』



それよりも、まだ負傷者が増えそうだ、と上空で繰り広げられている戦いを見ながら夜は呟いた。



ハリベルが、殺された。
バラガンが、負けた。
スタークが、負けた。



何もできない自分がもどかしい。



ひよ里が、斬られた。
白が、落ちていく。
拳西が、落ちていく。



何もできない自分がもどかしい。



『一…護…早く来てくれ…』



東仙さんが死んだ。
藍染さんの手によって。



この戦いを早く終わらせてくれ。
何もできない自分を許してくれ。



作られた空を見上げながら、夜は願った。
この先どうなるのか、最早知る者はいない。



『嘘…だろ…』



唖然とする修兵と、怒りを露わにする狛村のほうを見て、夜もまた唖然としていた。
藍染が彼…いや彼らのことを仲間だと思っていないことには気づいていた。
しかし、いざ、こんな光景を見てしまうと何で、どうしてと思ってしまう。



『…やめろ、狛村さん!』



藍染に斬りかかろうとする狛村を引きとめようとその場を離れた夜に目に飛び込んできたのは、救世主の姿だった。



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