…嘘でしょ?


だんだんと近づいてくるその人。
似てるけどそんなわけない。
どうしよう…話しかけてみようかな。
そんなことを考えながら歩いて行くと、その人にぶつかってしまった。



「痛っ!どこに目ぇ付けて歩いとるんじゃ、ボケ!」

『…すみません!』

「なんや、女かいな。気ぃつけやー」



やっぱりそうだ。
こうなったら…



『あの…もしかして平子真子さんですか?』



聞いてしまった。
案の定、驚いて目を見開いている



「なんやオマエ、なんで俺の名前知っとるんや?オマエ何者や?」

『私は…月闇夜という者です』

「そないなこと聞いとるんとちゃうわ!見たところ人間みたいやなァ」

『人間以外の何に見えるんですか。まあ、人間は人間でもたぶんこの世界に私の戸籍なんて存在しないんでしょうがね』

「ハァ!?何わけわからんこと吐かしとるんじゃ!」

『ですから、私はこの世界の人間じゃないんです…たぶん。でも貴方のことを知ってるんです。元護廷十三隊の隊長であったことも、現在は仮面の軍勢であることも。貴方だけじゃない、その仲間のことも首謀者のことも』



いけない…私としたことが、声を荒げてしまった。
危ないよな。
このままだとついいつもの癖が出てしまう。



「…どういう事や?」



駄目だ、だんだんイライラしてきた。
私自身良くわかんない状況なのに、それを人に説明するだなんてさ。
もういいや、どうにでもなれ。



『だから、私だってわかんねえんだよ!だいたい、初対面の相手に対してそんなものの言い方ないんじゃねえの?それに、私の名前はオマエじゃない!夜だよ、月闇夜!わかったか真子!』



目の前の人が目を丸くしたのは、きっと私の変貌ぶりを目の当たりにしたせいだ。
それから私は、元居た世界でこの世界のことが物語になっていること、そして真子の話からまだ物語以前だということがわかったので、これから先に起こる出来事を知っているかもしれないことを伝えた。



「…で、オマ…夜はこれからどうするんや?」

『とりあえず、浦原喜助の所に連れて行って。真子なら場所知ってるでしょ?』

「まァー知らんこともないけどなァ…」



真子は渋々ながらも浦原さんの所に連れて行ってくれた。
向かう途中で他愛もない話をたくさんした。
どうやら、私はこの人と仲良くなれそうだ…そんなことを思いながら。



「此処や」

『此処か…』



凄い…漫画のまんまだ。
浦原商店。



「おーい!おるかー喜助ェー!」

「何ですか朝っぱらから騒がしい…」



ガラガラと扉を開けて出て来たのは、店主の浦原喜助。
本物はやっぱりかっこいいななんて呑気に思う。



「オマエに客や。ほな、俺は帰るでー」

『ちょ…ちょっと待てよ真子!てめえも説明すんの手伝え!』

「アラ?アタシに用があるって言うのはそこの綺麗なオネーサン?」

『まぁ…私です。月闇夜と言います。少しお話を聞いて頂いてもよろしいですか?』

「…とりあえず、立ち話も何なんで中へどうぞ」



にっこりと食えない笑みを浮かべた浦原さんは、私達を浦原商店の中へと案内した。


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