尸魂界へと戻った夜は、まず総隊長の元へと向かった。



「夜、やっと帰ってきたか」



安堵の表情を浮かべる山本。



『ただいま、山じい。何か変わったことはあった?』

「そうじゃのう…十三番隊の朽木が現世で行方不明になっておったことは知っておるな?」

『ルキアか…。知ってる』

「その朽木が見つかったのじゃ。明日、六番隊に捕らえに行ってもらう。人間に死神の力を譲渡という罪を犯した罪人としてな」



夜は俯いたまま言葉を発しようとはしなかった。
やはり、こうなってしまうのか…。
未来を知っていながら変えることが出来なかった自分を責めていた。



「夜は朽木と親しくしておったのじゃろう?辛いのはわかるが、あ奴は罪を犯したのじゃ。その罪を償わねばならぬ」

『そんなのわかってるよ…。山じぃ、ルキアは死罪にはならないよな?』

「死神の力の譲渡は大罪じゃ。しかし…死罪になるほどではないと儂は思っておる。もっとも、決定を下すのは四十六室じゃが…」



その四十六室はもう居ないんだよ…そう言いたいのを飲み込んで、夜は出て行こうとした。
その時…



「待て、夜。いや、副総隊長月闇夜」



山本が夜を呼び止めた。
副総隊長…か。
そんな風に呼ばれるなんて初めてかも知れない。
そう思っていた夜に告げられたのは…



「お主も明日、六番隊と共に現世に行ってもらう」



残酷な命令だった。
次の日、夜は六番隊の朽木、恋次と共に穿界門の前に居た。



『白哉、恋次…本当にいいのか?』



ルキアは白哉にとっては義理の妹。
恋次にとっては幼馴染だ。
二人ともルキアのことを大事に思っているはずなのに…



「夜、私情を挟むな。これは任務なのだ。たとえ義妹であろうとも、罪を犯したならばそれを償わねばならぬ。掟を破ってはならぬのだ。そうだな?恋次」



白哉は悲しげな表情で語る。
恋次は黙って頷く。



『掟…か。でも白哉、これだけは覚えておいてくれ。掟に従うことが全てじゃない。白哉もそのうちわかると思う』



すっと夜を見据える白哉。
しかし、すぐに向き直ると穿界門へと足を踏み入れた。



「隊長、座軸は?」

「未確定だ」

『捕らえよ、さもなくば殺せ…か。死神の仕事じゃねえよな』

「まあな」

「そうでもないさ。出るぞ…」



三人の死神が現世に舞い降りた。



「背面適合113!神経結合率88,5!ホントに義骸に入ってんじゃねえか…」

『映像庁の情報信用してなかったのかよ…』

「まーな。とりあえず…







朽木ルキア見ぃーつーけた!」



夜は恐らく一護の家を抜け出してきたところであろうルキアを見つめる。



「私は…少しこちらの世界に長く関わりすぎたのか…」

「イエーッス!わかってんじゃねえか!まあ、そのおかげでちっとばかし長生きできたんだがな!ルキア!」



聞き覚えのある声に気づき、ルキアははっと上を見上げる。



「恋次…!阿散井恋次なのか!?」



その瞬間、恋次がルキアに切りかかろうとする。



『おい!待て恋次…!』



―ザッ―



夜の声が恋次に届くことはなかった。



「…朽木ルキアともあろう者が、そんな人間みたいな顔していいわけねーんだよ!なぁ!朽木隊長に月闇副総隊長!」



ルキアが振り向くと、そこにいたのは朽木白哉と月闇夜。



「白哉兄様…夜殿…」

「さあルキア!てめぇの力を奪った人間の居所を吐け!俺が殺す!」



その時だった。
何かが恋次のほうへと向かって飛んできた。



「これはこれは…見ててあまり気持ちのいいもんじゃないね…」

『雨竜…!』

「…君もいたのか。やはり、君も死神なんだね」



雨竜は夜に気づき、悲しそうに言った。
恋次はその様子に気づいていないようだ。



「何者だてめぇ…!?」

「…ただのクラスメイトだよ。死神嫌いのね」


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