−空座町上空−



『夜になっちまったな。もうルキアは一護に会ったかな…』



そう呟く夜が向かったのは浦原商店。



『喜助さん、ただいまー』



夜の視線の先にはルキア。



「夜殿!何故ここに!?」



ルキアは驚きを隠せない。
夜はその問いには答えずに続ける。



『ルキア…もう黒崎一護には会った?』

「何故その名を…っ!?」

『あー、やっぱり遅かったか…』



ルキアが現世へ行ってどのくらいで一護に遭遇したのかわからなかった夜は、すでに事が起こってしまった後であった事を知り、落胆した。



『これも運命ってものなのかもな…。ルキア、アンタが此処にいるってことはもう喜助さんに義骸借りたってことだよな?』



夜がなぜそんなことを聞くのかわからなかったが、ルキアはそうだと頷いた。



『まあいいや、今は一護の家に住んでるんだろ?早く帰らないと心配されるんじゃねえの?』



笑いながら言う夜にルキアは尋ねる。



「夜殿…貴女は罪を犯した私を連れ戻しに来たのではないのですか?」

『何わけわかんないこと言ってんだよ。言っただろ?私はルキアの味方だって。それに、確かに人間に死神の力を与えることは霊法に引っかかる。でもな、そうしないとアイツの家族もアイツ自身も死んでたんだ、そうだろ?』



そう言って微笑む夜を見て安心するルキア。



「しかし、やはり尸魂界に戻れば私は裁かれねばならない身…私は…」

『もういいから。とりあえず、ルキアはその義骸に入って力が回復するのを待ってな』



まだ何か言いたげだったが、夜に促されてルキアは一護の家へと戻っていった。



『さて…と。そろそろ出てきてもいいんじゃねーの、喜助さん?』

「やっぱりバレてましたかー、さっすが夜サン!」



霊圧を隠していた喜助が現れる。



『ったく、本当に喜助サンは余計なことしてくれるんだから』

「余計なこと?アタシはルキアサンに義骸を渡しただけっスよ?」

『霊力を奪う義骸を…だろ?』



夜の言葉に黙ってしまう喜助。



「夜サン…アナタは一体どこまで知っているんっスか?今回の黒崎サンのことといい、アナタはまるでこうなることを知っていたかのようです。そろそろ教えてくださいませんかねえ〜」



そう言って深く被っていた帽子を少し上げる。



『どこまでって、全部だよ。喜助サンたちがある事件が元で尸魂界を追放されたことも、崩玉を作ったことも、それをルキアの中に隠したことも』



今まで自分のことをほとんど夜に話さなかった喜助は、夜がその事実を知っていたことに驚いていた。



「そうっスか…。物語とは恐ろしいものっスね。私があえてアナタに話さなかったのに、アナタはもう既にそのことを知っていたなんて…」

『言っただろ?私は未来を知ってる。だから、その未来に関わる過去のこともある程度は知ってるんだ』



知りたくなくても…そう最後に夜は呟いた。



「で、夜サンはアタシをどうするおつもりっスか?殺します?それともどこかに閉じ込めて崩玉の壊し方の研究でもさせます?」



自嘲気味に喜助は笑った。



『喜助さんには…今は黒崎一護の助けをしてほしい。アイツは今はルキアの死神の力を借りてるだけだ。事が起こるまで…ルキアが現世に居る間はそうしてほしい』



思いがけない夜の答えに喜助は驚いた。



「でも、アタシは『“今は”って言っただろ?』…は?」

『じきに尸魂界からルキアを連れ戻しに来る奴が来る。本当に喜助さんの力を借りるのはそれからだ。あとは…』



夜は喜助にもう一つ、ある頼みごとをした。


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