ギンの着替えも済み、二人は家を出た。
外に出ると案の定、すれ違う人々がギンを振り返る。
無理もない、普通の洋服を着ているとはいってもその髪の色と整った顔立ちは人目を引くのに十分だった。



「なんや、こっちの人はそないにボクのことが珍しいんやろか?」

『ギンが変な髪の色してるからだろ?』



酷いわァ〜と笑いながら、ギンと夜は街の中を歩く。
ふと、ある店の前で夜が足を止めた。



『そうだ、ギンに服買わなきゃ。さすがにそれは小さいだろうしな』



夜に促され、ギンもその店の中へと入っていく。



「夜、これどうやろ?」



適当に服を選んで試着したギンが出てきた。
悔しいが、細身のカットソーにジーンズというシンプルなものなのによく似合っている。



『…いいんじゃねえの?』

「わあ!お客さんお似合いですよ!こんな素敵な彼氏さんが居て、彼女さんが羨ましいです!」

「そうですかァ〜?」



へらへらと笑うギンを睨みつけ、夜はさっさと会計を済ませて店を出る。



「夜、買うてもろて良かったん?」

『どうせギンはこっちに金持ってきてねえだろ?』



それもそうやったなァ〜と自分が今居るのは元の世界ではないことを思い出すギン。
おもむろに夜の右手を取る。



『何だよ?』

「いや、指輪着けてくれとるんやな思うて」



そう言って夜の右手に光る指輪をなぞる。



『別に…外すのが面倒なだけだよ…』

「素直やないなァ〜」



煩いとギンの背中を叩き、家へと向かう夜。
その足どりは心なしか軽かった。



家に着くと、二人はこれからどうするか話し合った。
しかし、いくら考えたところで解決方法が見つかるわけもなく、二人は途方に暮れていた。



「なァ夜、もう向こうに戻られへんのやったらボクこっちで暮らそう思うんやけど…」

『何言ってんだよ!だいたいこっちには住む場所も働く場所もねえだろ?』

「そんなん此処に住めばええし、ボクやったら働くとこなんてすぐに見つかるし!」



何でこうも楽天的な性格なのだろうと半ば呆れる夜。
飲み物でも取りに行こうとキッチンへ向かう。
それとは対照的に、ギンはとても嬉しそうだ。



「それに、こっちやったらいつも夜と一緒に居れるもんなァ〜。ボクこっちのほうがええわ」

「おい!何寝ぼけたこと言ってんだよ!」

「夜?何か声おかしない?」



聞きなれない声にギンが振り返ると、そこにいたのは夜ではなかった。



「キミ…誰?」

『黒!?なんでこっちに…』



キッチンから戻ってきた夜の目に飛び込んだのは、自らの斬魄刀のもう一つの姿“黒”だった。



「俺だってわかんねえよ。気がついたらこっちに来てたんだ。ずっと実体化できなくて苛々してたんだよ!」

「黒…あァ、虚のほうか。何でキミもこっちに来とるん?何で実体化できるようになってん?」

「てめえのせいだよ、狐野郎!霊力の高いてめえが夜の側にいたから、夜の霊力も向こうに居た時並になったんだ」



突如二人の前に現れた“黒”月光華。
元居た世界に戻ってきた夜はこれからどうするのか…



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