破面の面々が去った後―とはいっても、グリムジョー以外は限定解除をした死神たちに倒されたため、グリムジョーのみだったのだが―夜は一人浦原商店へと戻っていた。 「接触したんスか?破面と…」 『一体だけな。十刃(エスパーダ)の一人だ』 そうスか…とだけ言う喜助に夜は顔を向ける。 『喜助さん、一護は…』 「行ったんでしょ?“仮面の軍勢”のところに。」 無言で頷く夜。 喜助は俯いた夜の頭をそっと撫でる。 「黒崎サンなら大丈夫っス。それよりも夜サン、アタシは貴女のほうが心配です」 顔を上げて喜助を見ると、普段は帽子で隠れて見えない目が覗いていた。 その目は…悲しそうだった。 「一人で全部抱え込んじゃ駄目っスよ?未来を知っていようがいまいが貴女は貴女です。漫画の世界だろうがなんだろうが、この世界に今生きているんです。夜サンの思ったとおりにやればいいんスよ」 『ありがとう、喜助さん…』 よしよしと頭を撫でられ、夜は久しぶりに安心できたような気がした。 『…今、喜助さんなんて言った?』 「何って、夜サンは夜サンだって話っスよ?」 不思議そうな顔をして首を傾げる喜助。 『いや、そこじゃなくて“漫画の世界”ってとこ!』 ああ!と手を叩き、喜助はにっこりと笑う。 『私は“物語”としか言ってねえよ?』 こちらの世界に来たとき、さすがに漫画であるとは言えずに物語であるとだけ言っていたのだ。 「そんなの、簡単っス!夜サンアタシたちの顔知ってましたし。小説なら顔なんて知らないはずでしょ?」 そしたら思いつくのは漫画だけっス!!と自信満々に言う喜助に夜は呆れる。 『せっかく気使って言わなかったのに…』 「まあまあ、気にしないでいいっスよ!それより行くとこ、あるんじゃないスか?」 喜助に言われて、夜は浦原商店を出る。 『あ、恋次のことよろしくな!』 六番隊の副隊長が来たら、家においてやってくれと頼んでいたのだ。 「任せてください!雑用係としてありがたく使わせていただきます!」 笑顔で手を振る喜助に、夜は苦笑するしかなかった。 『恋次、頑張れよ…』 心の中で手を合わせて、夜は浦原商店を出た。 ←→ back |