「悪い夜、ちょっと先に行っててくれねえか」



浦原商店へと向かっていた夜と恋次だったが、恋次に言われて夜は先に一人で帰ることにした。



『なんだよ、そんなに喜助さんに会うのが怖いのかよ…。あ、まだ心の準備ができてねえとか?』



独り言を言いながら歩いていく夜。
その時だった。
突如、大きな霊圧を感じた。



『この霊圧…嘘だろ!?あいつ等が来るのは夜のはず…』



自分の知る物語と違う展開に動揺する夜。
ふと目の前を見ると、水浅葱色の髪をした男が笑っていた。



「てめえ死神だな?ずいぶんとでけえ霊圧だなァオイ!」

『グリム…ジョー………』

「何だァ?てめえ俺の名を知ってんのか!名乗る手間が省けたぜ!」



言い終わる前に夜へと向かってくるグリムジョー。
夜はさっとそれをかわす。



『なんだ、藍染サマから私のこと聞いてねえのか。破面・No.6(アランカル・セスタ)グリムジョー・ジャガージャック?』

「てめえ…何者だ…」



先ほどとは打って変わって怪しげな笑みを浮かべる夜に恐怖を覚えるグリムジョー。



『私は護廷十三隊副総隊長、月闇夜だ』

「月闇夜…だと!?」



グリムジョーの脳裏に藍染の言葉が過ぎる。



―君たちも覚えておくといい。月闇夜という死神には決して手を出してはいけないよ?
最も、彼女に刀を向けたところで君たちに勝ち目はないんだがね…



「…てめえが藍染サマが言ってた女か。強えんだろ?俺の相手しろよ!」



再び斬りかかってきたグリムジョーに夜は刀を向ける。



『しかたねえな…少しだけな?』



―カキィン



二本の刀がぶつかり合う。
夜の表情はまだ余裕であることを窺わせる。



「なんだよ、てめえの力はこんなもんかよ!?」



本気を出さない夜に苛立ち、グリムジョーは攻撃の威力を上げる。



『悪いけど、てめえの相手は私じゃねえんだよな〜』



―カシャ…



グリムジョーの首筋に冷たいものが触れた。



『あんまり自分のことを過信しすぎるんじゃねえぞ?あとその左腕、大事にしろよ』

「何言ってんだてめ…」

『ごちゃごちゃ言ってねえで霊圧探ってみろよ。仲間が一人、殺られたみてえだけど?』



夜に言われて霊圧を探ると、仲間の一人ディ・ロイが消えたことに気づいた。



『私とやるよりあっちに行ったほうが面白いかも知れねえよ?』

「うるせえ!」



夜を振り切ると、グリムジョーはディ・ロイの居たほうへと走り出した。



『全く…グリムジョーって本当に短気なんだな、東仙さん?』



さっと姿を現したのは東仙要。
元九番隊隊長で、現在は藍染たちと共に虚圏に居る。



「気づいていたのか、月闇君」

『当たり前だろ。グリムジョーを連れ戻しに来たんだろ?』



ニヤリと笑みを浮かべたまま夜は言う。



「そろそろ行くとするよ。君も一度こちらに来るといい」

『ウルキオラにもこの前言われたよ』



ふっと笑みを零し、東仙は夜のほうを向く。



「君が居ないと市丸の機嫌が悪くてね。早くどうにかしてほしいんだよ」

『ギンが?…わかったよ、そのうち行く。藍染さんによろしくな』



わかった…と言い残し、東仙は一護と戦っているグリムジョーの元へと消えた。



『虚圏…か。ヤべっ限定解除の許可しなきゃ!』



夜は自分に限定解除の許可の権限が与えられていたことを思い出し、急いで皆に知らせた。



『聞こえてるか?全員の限定解除を許可する!』


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