幾重にも結界を張った喜助はその中でのやり取りを眺めていた。



「夜、オマエに説明しておくことがある。それは、オマエの卍解の力だ。」



月光華によると、夜の卍解には二種類あるという。
一つ目は月光華の力を使う白月光華。
切った対象の能力を写し取る力だ。一度写し取った能力は永久に使うことができる。
そして二つ目は、内なる虚の力を使った黒月光華。
切った対象の力を一時的に(約一日)封じることができる。



「今使うことが出来るのは白だけだが、めんどくさがりのアイツのことだ、すぐに使えるようにしてくれるだろ」



そう言って、月光華は夜を精神世界へと連れていった。
少なからず不安を覚える喜助だったが、今は月光華の言うことを信じるしかない。
そして、精神世界へとやってきた夜の視界に見慣れぬ人物が入る。



「よう、はじめましてだな夜。この世界の王よ」



そう言ったのは、白い死覇装を纏う黒髪の男。



『オマエが内なる虚?』

「そうだ、なんか文句あっか?」



外見だけでな口調までが月光華に似ていて、思わず噴出しそうになる夜。
それに気がついた内なる虚は呆れたように話し出す。



「あのなー俺とアイツが似てんのは仕方のねーことなんだよ。なんてったって、双子みたいなもんだからな」

『双…子?』

「そー双子。元々、月光華ってのは虚の力を持った刀なんだよ。だから、卍解の時表のアイツは白で裏の俺は黒なの」



思いがけない事実に驚く夜
少し間を置いて話し出す。



『じゃあ、オマエの名前は黒だな!』

「はぁ!?」

『だって、名前ないと呼び辛いじゃん?だから、オマエの名前は黒。この世界の王の言うことなんだから絶対!』



勝ち誇ったように笑う夜に”黒”と名づけられた者は呆れる。



「ったく仕方ねーな…」

『なあ黒、どうやったら黒月光華使えるようになるんだ?』



ここにきてようやく目的を思い出し尋ねる。



「それなら心配ねえよ。もう使える。じゃ、さっさと戻れ」



そう言って黒は夜の目を覆った。

精神世界から戻ってきた夜は、喜助に黒の話をした。



「…つまり、夜サンはもう虚化もできるってことなんですね?」

『たぶん…できると思う。ただ、恐らく卍解状態じゃないと出来ないんじゃねえかな』



黒月光華が黒の力なら、虚化は黒月光華を使っている時にしかできないはずだ。



「わかりました。じゃあ、夜サンに私が教えてあげられることはもうありませんね。上に行って休憩しましょう」



そして、夜と喜助は練習部屋を出た。
その時、夜は喜助さんに聞かなければならない大事なことを思い出した。
この世界で自分ができること、それを見つけるために。
喜助の淹れてくれたお茶を飲みながら、夜はどうやって話を切り出そうかと考えていた。



「…夜サン、何か私に聞きたいことでもあるんじゃないっスか?」

『えっ?いや、えーっと…その…』

「なんでも聞いて下さいね夜サンの頼みなら断ったりしませんから」

『……喜助さん、とある人物について喜助さんが今知っていることを教えて欲しいんだ。黒崎…黒崎一護について』

「…一心サンの息子サンのことですか?」



やはり喜助は黒崎一護のことを知っていた。
一護はまだ死神の力を得ていない。
でも、彼が今何歳なのか夜は知らない。



『そう、黒崎一心の息子。そいつは今いくつなんだ?』

「一護サンは中学三年生っス。馬芝中に通っているはずですよ」



今は四月…ということは、物語が動く一年くらい前。
この話を聞きながら、夜はとある決意をしていた。



『喜助さん、お願いがあるんだ。私を尸魂界に連れて行ってほしい』



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