最後に見たのは柔らかく微笑む惣右介さんの顔だった。 そして目が覚めると、卯ノ花隊長が優しい目で私を見ていた。 終わりましたよ。 その言葉で、全てを悟った。 もう惣右介さんは居ないのだと、そう思った。 「藍染惣右介は捕えられました。直に四十六室が裁定を下すでしょう」 「そう、ですか……」 「あと……貴女に話があるという方が」 そう言って身体を起こされれば、目の前に居たのは平子隊長だった。 幾分か容姿が変わっているけれど、ばつが悪そうに笑うその顔は百年前と少しも変わっていなかった。 「久しぶりやなあ」 「平子、隊長……無事で……」 最近泣いてばかりだ。 もっと強くならないといけないと思いつつも、私の頭を撫でてくれる隊長の胸で私は声を上げて泣いた。 ずっと会いたかった。 ずっと平子隊長のことを考えていた。 「藍染が居らんようになって、一人で五番隊支えとったんやて?凄いやないか」 「だって、平子隊長の護っていた五番隊を潰すわけにはいきませんでしたから」 「もう隊長やないわ、真子て呼び」 「しん、じ……さん」 それでもええわ、そう言って隊長は力いっぱい私を抱きしめた。 聞こえてくる心音が心地いい。 隊長は生きているんだ、こうして今目の前に居るんだ。 それだけで十分だった。 「リナ、お前に言わなあかんことあんねん」 「何ですか?」 「俺な、お前の事が好きや。ずっと昔からな」 頭が真っ白になった。 隊長が私の事を好き? ずっと昔って、尸魂界に居た頃から? 嬉しいのと同時に、後悔をした。 言っておけばよかった、と。 「隊……真子さん、私は惣右介さんと……」 「んなこと知っとるわ。それでもええねん、俺がリナを好きなことに変わりはないんや。それに、お前が今こうして元気で居れるんはアイツのおかげでもあんねやろ」 小さく頷くことしかできなかった。 惣右介さんが居たから、平子隊長達が居なくなった後も私は死神として頑張れた。 彼が居なければ、きっとあの場所には辛くて居られなかったと思う。 「リナの気持ちを聞かせてくれなんて言わん。これは俺のケジメや。あの日、お別れも言わんと消えてしもうたからな」 「お別れだなんて……」 「リナ、さよならや。お前は強くなった、もう一人でも大丈夫なはずや」 ほな、そう言って隊長は私に背を向けた。 私も隊長の事が好きです。 ずっとずっと好きでした。 そんな言葉は口から出てこなくて、私はただ小さくなっていく隊長の背中を見つめることしかできなかった。 「真子さん!」 やっとの思いで名前を口にした時には、もう隊長の姿は見えなくなっていた。 これでお別れなんだ。 もう二度と、今度こそもう隊長には会えないんだ。 さよならは言えなかった。 いや、さよならなんて言いたくなかった。 → back |