入隊して二年が経った頃だった。
藍染三席が副隊長になった。



「藍染三席、おめでとうございます!あ、もう三席じゃなくて副隊長ですね」
「ありがとう、リナ君。隊は変わらないからこれからもよろしくね」



藍染三席改め藍染副隊長は私の頭を撫でた。
隊長といい副隊長といい、よく私の頭を撫でる。
子供扱いしているんだろうか。



「惣右介、リナに触んなや。副官の話なしにするで」
「何言ってるんですか。部下を可愛がっているだけですよ」
「そうですよ、隊長は過保護すぎます。私だって子供じゃないんですから」



隊首室。
一番に藍染副隊長にお祝いを言いたくて走って来た。
副隊長ともなれば今までのように気軽に話すことができなくなるのかと思えば少し寂しい。



「何むすくれた顔しとんのや。ブサイクな顔が余計ブサイクになるで?」
「隊長!」
「まあまあ、隊長は冗談で言っているだけだからね。悪い大人の言うことは聞くものじゃないよ。隊長もいくらリナ君が可愛いからってからかわないで下さいよ」
「副隊長までからかわないで下さい!」



けれどもそんな心配はすぐに吹き飛んだ。
副隊長になっても、彼はそのままだった。
それまでと同じように接してくれるし、彼が副隊長になったおかげで隊長と居る時間も増えた気がする。



「隊長、明日の演習なんですが……」
「ああ、明日はお前んとこの部隊やったな。任せるで」
「はい、頑張ります」



以前に比べると仕事を任せてもらえるようになった。
最初は先輩に付き添ってもらっていた任務も、今では一人で部隊を動かすようになった。
生きるために選んだ道だったけれど、今はこんなにも死神という仕事が楽しい。



「リナ、今日の夜空いとるか?」
「はい、どうしたんですか?」
「惣右介とお前の昇格祝いや」
「私?」



首を傾ける私に、隊長はニッと笑って一枚の紙を差し出した。
それは辞令。
五番隊六席への昇格。



「惣右介が副隊長に昇格してな、席に空きができてん。リナやったら六席でも大丈夫やろ」
「ありがとうございます!」



また一歩隊長に近づいた。
任務から戻ると足早に隊首室に行った。
ちょうど隊長と副隊長も仕事が終わったらしく、報告を済ませると私達は隊長の先導で街に出た。



「リナ君もおめでとう。入隊した頃から見ていた君が成長するのは嬉しいよ」
「副隊長のおかげですね」



隊長の後ろを歩きながら、副隊長と会話をする。
副隊長に昇格してからというもの、やはり以前より少し会話をすることが少なくなった。
それでも藍染副隊長は以前のままで、こうして話していると安心する。



「ここや、入りや」



私達が連れて来られたのは何だか高そうな料亭。
こういったところに入るのは初めてだ。



「何やリナ、緊張しとんのか」
「そりゃあ緊張しますよ。こんなところに来るの初めてですし」
「大丈夫だよ、僕達も居るから」



案内された部屋の中は食事をするだけにしてはもったいないほどの広さ。
ただの席官には一生手が出ないんじゃないかと思う。



「美味そうやなあ。ほんなら食うか」
「そうですね」
「じゃ、惣右介の副隊長昇格とリナの六席昇格、おめでとさん」
「ありがとうございます」



出された料理はどれも美味しくて、緊張もだんだんとほぐれてきた。
私ばっかりこんなに良くしてもらっていいんだろうか。


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