最近、隊長に避けられている気がする。
きっと気の所為じゃない。
あの日からだ。



「副隊長」
「どうしたんだい?」



仕事が終わった後、帰ろうとしていた副隊長に話しかけた。
もしかしたら副隊長ならその理由を知っているかもしれないと思ったから。



「私、隊長に何かしたんでしょうか……」
「ああ、最近隊長の機嫌が悪いからね」



副隊長も隊長の異変には気付いているみたいだけど、その理由までは知らないようだ。
せっかく仲良くなれたのに、このままの関係が続くのは嫌だと思った。



「大丈夫、リナ君が気にすることはないと思うよ」
「でも……」
「あまり悩みすぎるのもよくない。僕でよかったらいつでも話を聞くからね」
「ありがとうございます」



副隊長はいつだって優しい。
こんな副隊長のことを警戒しろって隊長は言ってたけど、やっぱり私には副隊長が悪い人だなんて思えない。



「藍染副隊長……あ、リナちゃんも居ってんやね」
「市丸君……」
「そうだ、今からギンと食事に行くんだ。リナ君も一緒にどうだい?」
「いいんですか?」
「リナちゃんが一緒のほうがええ」



市丸君に手を引かれて三人で隊舎を出る。
途中で隊長とすれ違った。
小さくお疲れ様と言われた。
何であんなに悲しそうな顔をするんだろう。



「なしたん?そないに浮かない顔して」
「ううん、何でもないよ」



市丸君にまで気付かれてしまうなんて。
席次が下とはいえ先輩なのに、もっとしっかりしなきゃいけないな。



「せや、この前ボク斬魄刀の名前聞いたんよ!」
「凄いじゃないか。どんな斬魄刀なんだい?」
「神槍言うねん。ぐーんと伸びる」



嬉しそうに話をする市丸君。
私が斬魄刀の名を聞けた時も、副隊長は嬉しそうだった。
その時の副隊長の気持ちが何となくだけどわかった気がした。



「何だか嬉しいですね」
「リナ君が成長するのを見るのも楽しかったけど、これからはギンが成長していくのと楽しみが増えたよ」
「私も、市丸君の成長が楽しみです」
「せや、藍染副隊長なんかすぐに抜かしたるさかいにリナちゃんよく見とってや!」



市丸君の笑顔を見ていると、少しだけ心が晴れるような気分だ。
隊長が何と言おうと、私にとっては副隊長は大事な人で、隊長もまた大事な人なんだ。


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