部屋の前で大きく深呼吸をする。 この向こうにあの人がいるんだ。 霊術院の頃からずっと憧れていたあの人が。 「失礼します」 中に入ると、一番に目に入ったのは風になびく金色。振り返ったその人はずっとずっと憧れていた人で。 思わず胸が高鳴った。 「何や?えっーと新入りか」 「秋野リナです。本日付で五番隊配属になりました、どうぞよろしくお願いいたします」 深々と頭を下げる。顔を上げると、その人はニッと笑っていた。 「そうか、俺は隊長の平子真子や。よろしゅうな」 「はい!」 ずっとずっと憧れていた。 地獄絵図のような流魂街から抜け出して入学した真央霊術院。 生きるために死神になろうと思った。 「リナでええか?」 「は、はい」 死神になればまともな生活ができる。 そのためにがむしゃらに勉強したし、鍛練だってしてきた。 そしてあの日、目の前のこの人―平子隊長が霊術院に特別講師としてやってきた。 「お前は何席やったかいな」 「席次、ですか?」 「せや。リナやろ?鳴り物入りで入隊したいう奴」 「そうですよ、彼女です」 「俺の目に狂いはなかったっちゅうわけやな」 一瞬にして目を奪われた。 風になびく金色の髪。 親しみのある笑顔。 「え?」 「リナは気にせんでええわ。ま、とりあえずは十席からや」 「ありがとうございます」 講義の時はへらへらと笑っていたのに、実技となれば一変した表情。 これが隊長格の強さなんだと驚かされた。 「最初はわからんことばっかりやろうし、三席に仕事教えてもらいや。惣右介呼んできてくれるか?」 「はい、わかりました」 それからの私は以前にも増して鍛練に励んだ。 ただでさえ希望者の多い五番隊。 そこに入るためには強くないといけない。 少しでも、少しでも近付きたかった。 「隊長、お呼びですか?」 「惣右介、今日からこの子に仕事教えたってや。お前教えるの上手いやろ」 「上手かどうかは分かり兼ねますが、精一杯やらせていただきますね」 こうして立ったスタートライン。 今日から私は、平子隊長の下で働けるんだ。 「秋野リナです、よろしくお願いします」 「三席の藍染惣右介だよ、よろしくね」 「惣右介、若い子に手出したら承知せえへんで」 「何をおっしゃっているんですか。隊長こそ、くれぐれも彼女に幻滅されないように気を付けて下さいね」 死神一日目、私は期待を胸に真新しい死霸装に身を包んでいた。 → back |