尸魂界へと戻り、私は元のように五番隊三席として業務をこなしていた。 あの日から一月が経つ。 平子隊長にはあれから会っていない。 「リナさん、どうしたんですか?」 隊主室、筆の止まっていた私を桃ちゃんが心配そうに見ていた。 なんでもないよと笑顔を向けて、再び手を動かす。 平子隊長に会いたくないわけではないし、むしろ会いたい。 会う手段がないかといえば、そうでもない。 けれども、会いに行っていいものか、あれから一ヶ月悩み続けている。 「全く、いつまでウジウジ悩んでるんですかー?会いたいなら会いに行けばいいのに」 とある日、乱菊ちゃんに飲みに誘われて来てみれば、この有様。 いつものごとく酔っぱらった彼女に、平子隊長に会いに行けと言われた。 これもきっと彼女なりの気遣いなのだ。 彼女とて、幼馴染だったギンが居なくなって寂しいのに。 会いたくても会えないのに。 「会えるうちに会っておいたほうが、きっと後悔しませんよ」 いつまでも会えるとは限らないんですから。 その彼女の言葉は、私の心に重くのしかかった。 それっきり寝てしまった彼女の顔には、薄らと涙の筋が見えた。 それからしばらく経ってのことだった。 それは突然の知らせで、私はこれが夢なのかはたまた現なのか、わからなかった。 「失礼します」 私は、あの日――初めて五番隊に来た日のように――緊張しながら隊首室の扉を開いた。 ← back |