「雛森、お祝いに来たわよ!あ、リナさん」 「乱菊ちゃん」 桃ちゃんと話をしていると乱菊ちゃんがやって来た。 手にはお菓子と何故かお酒。 また日番谷隊長に怒られるんじゃないかな。 「乱菊ちゃん、ウチの隊舎でお酒は厳禁だからね」 「えーちょっとくらいいいじゃないですか」 「駄目、惣右介さんに怒られるのは私なんだから」 「藍染隊長の奥さんに言われちゃあねえ」 「奥さんじゃないから……」 渋々お酒を引っ込めてお菓子を広げる。 彼女は市丸君の幼馴染だそうで、小さい頃から良く五番隊に顔を見せていた。 今では十番隊の副隊長として部下からも慕われている。 「乱菊さん、ありがとうございます」 「いいのよ、私も雛森が副隊長になって嬉しいんだから」 女三人で他愛もない話をしていると、良く知った霊圧を感じた。 扉の開く音に振り向けば、惣右介さんが帰って来ていた。 「おかえりなさい、惣右介さん」 「おや、皆で休憩かい?」 「よかったら隊長もどうですか?乱菊さんがお菓子を持ってきてくれたんです」 「じゃあ、僕もご一緒しようかな」 五番隊にはいつも笑顔が溢れていた。 何よりも、隊長である惣右介さんがいつも笑顔だったから。 隊士達にも慕われて、彼は本当に凄い人だと思う。 そんな人が私のことを想ってくれているだなんて、私はやっぱり幸せ者だ。 「惣右介さん、花びらが」 彼の髪に付いていた花びらを指先で掠めとる。 ありがとうと言う彼の瞳には確かに私が映っていた。 彼と同じように微笑んだ私が。 「二人とも、目の前でいちゃつかないで下さいよー」 「乱菊ちゃん、別にそんなんじゃ」 「ははっ、松本君には敵わないな」 「惣右介さんまで……」 しばらくすると日番谷隊長がやって来て、仕事を抜け出して来たらしい乱菊ちゃんは連れて帰られた。 終業時刻を迎えれば、惣右介さんと二人で家に帰る。 家に着けば彼の羽織を畳んで私も部屋着に着替える。 「今日はご飯簡単なものでもいいですか?」 「ああ、リナの作るものならなんでもいいよ」 「もう……」 夕食を終えたらお風呂に入って、二人で同じ布団に潜る。 横には眼鏡を外した惣右介さんの顔。 もう何年も一緒に居るけれど、まだこの距離には慣れない。 「惣右介さん、好きです」 「僕もだよ、リナ」 何の変哲もない毎日。 こんな幸せな日々を送る日が来るだなんて、あの頃は考えもしなかった。 もし、もしあの時平子隊長が帰って来ていたなら。 そんな考えを胸の奥にしまいこんで、惣右介さんのぬくもりを感じながら瞼を閉じた。 ← back |