「緊急招集!?」 その日の夜、瀞霊廷内に警報が鳴り響いた。 緊急の隊首会。 何かがあったことは間違いない。 先日隊長が言っていた一件だろうか。 それならば今九番隊が調査に出ているはず。 「大丈夫だよ」 「副隊長……」 「長い夜もいつか明ける。今僕達にできることは命令が出るまで待機することだ」 「そないに心配せえへんでも、九番隊の隊長さんは怖そうやしきっと虚も怯えて逃げ出すで」 副隊長と市丸君はいつものように笑った後、隊舎を後にした。 隊長は隊首会へと向かった。 何だか帰る気になれなくて、誰も居ない隊首室で一人座っていた。 どうしようもなく胸騒ぎがする。 今までの楽しかった毎日が崩れるような気がしてならなかった。 「早く夜が終わればいいのに……」 窓の外に浮かぶ月を見ながら呟いた。 気付けばいつの間にか眠っていて、今度は酷く幸せな夢を見たような気がした。 「藍染……」 「平子隊長、安心なさって下さい。彼女は悪いようにはしませんから」 「お前、アイツに何かやったんか!?」 「何もしてませんよ?しいて言うならば貴方が居なくなることの原因が僕だというだけでしょうか」 目の前に居る男はやはり俺の思った通りの奴だった。 怪しいと思っていたのに、そのために傍に置いたのにこれを防げなかった自分が不甲斐ない。 恐らく俺はもうあの場所には戻れないだろう。 あの子にももう、会えないだろう。 「くそっ……お前……」 こんなことになるなら伝えておけばよかった。 俺はお前のことが好きだって。 隊長という地位に囚われて何も言えなかった。 言ってはいけないと思っていた。 それなのに、俺は…… 「どないしますの?」 「何、心配することはないよ。リナ君の心のケアは僕がするさ。ギンにも協力してもらわないとね」 予想外の、いや予想以上の展開だった。 隊長格の何人かが来るだろうとは思っていたけれど、まさか平子真子が来るなんて。 今の護廷において私が最も危惧すべきなのはこの男。 この男が居なくなってくれれば動きやすくなる。 「少し、寂しい思いをさせてしまうだろうけどね……」 唯一、私の心に影を落とすものがあるとするならば、それは彼女だ。 彼女は明らかにこの男を慕っていた。 その男が目の前から居なくなったらどうなるのだろうか。 私を疑うだろうか。 「考えすぎ、か……」 きっとそんなことはない。 彼女は怖いくらいに純粋だ。 血に濡れた私とは正反対なのだ。 そんな彼女だからこそ、私は惹かれているのかもしれない。 ← back |