とある日、私は隊長に呼ばれて隊首室に来ていた。
何でも大事な話があるそうで。
柄にもなく緊張してしまう。



「リナ、お前明日から四席や」
「え?」



頬杖をついてだるそうにしている隊長の口から出たのは驚きの言葉。
横に立っている副隊長は、いつものごとくニコニコと笑っている。



「今の四席が他隊に異動することになってね、空きができたんだ」
「でも私は……」
「今のお前なら大丈夫や。隊長の俺が見込んでんねや」
「そうだよ。僕も隊長も、君にならできると思ってる」



嬉しいような恥ずかしいような。
こうして認められたことが嬉しくて、顔がにやけるのを抑えられなかった。



「何ニヤニヤしとんねん」
「嬉しいんです!」
「せや、六席には今度霊術院を卒業する奴が就くさかい、しばらく仕事教えたってな」



霊術院を卒業したばかりの子が六席。
それだけでもとんでもない実力を持った子なのだとわかった。



「彼はまだ幼くてね。きっと慣れないことばかりだろうから、よろしく頼んだよ」
「はい、精一杯頑張ります!」



そして次の日、私は四席になった。
机の荷物を移動させていると、執務室にまだ幼い少年が姿を見せた。
その子は真っ直ぐに私の元に来ると、ニッと笑った。



「お姉さんが秋野さん?」
「うん、そうだけど……」
「ボク市丸ギンいいます。今日から五番隊配属になったんでよろしゅう」
「君が新しい……」



副隊長の言った通り、彼はまだ幼かった。
こんな子が霊術院を一年で卒業しただなんて、とてもじゃないけど信じられなかった。



「こら市丸!まだ話は終わっとらんわ!」
「あ、隊長に見つかってもうた」
「何が見つかってもうたや!ちょうどええわ、リナも来い」



半ば引きずられるようにして隊首室に行けば、神妙な顔つきの副隊長が居た。
何かあったんだろうかと聞く前に、隊長が一つ溜息を吐いて話し出した。



「昨日の晩に、三席が何者かに殺された」
「三席が!?」



五番隊の三席は、少し怖いけれど実力のある人だった。
私もよく仕事を教えてもらっていたし、一緒に鍛練したこともあった。
その三席が殺されるなんて。



「このことは口外禁止や。アイツを殺せる奴なんてそうそう居らへんからな」
「でも、三席が居なくなったら……」



新しい三席とは言っても、副官補佐ともなればなれる人なんて限られる。
かといって空席にしておくわけにもいかないし。



「そんでな、この市丸を三席にしようかと思うててん」
「市丸君をですか?」
「初めは慣れへんことばかりやから、少し経ったら昇格させようかと思うててんけどな、他になれそうな奴が居れへん」



隊長はじっと市丸君を見た。
彼は相変わらずニコニコと笑っている。
もしかしたら三席がどんなものかわかってないんじゃないだろうか。



「三席いうたら、副隊長の補佐する仕事ですよね?藍染副隊長がええんやったらボクはええですよ」
「ほんなら決まりや。リナ、しばらくコイツの面倒も見たってくれ」
「それは構いませんけど……」



いくら新入隊士とはいえ、私の上官に当たるのだ。
そんな子の面倒を見るなんてできるんだろうか。



「心配せんでも、コイツはまだ何も知らん。餓鬼の世話係や思うて気楽にやりや」
「餓鬼やないですよ。というわけで、よろしゅう頼みますリナさん」
「うん、よろしくね」



にっこりと手を差し出されれば断るわけにもいかず。
恐る恐る手を握ればギュッと握り返された。


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