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初めて彼女の姿を目にした時、純粋に綺麗だと思った。



『お兄ちゃん、ここで何やってるの?』



流魂街という場所でこんな綺麗な着物を着ている幼子がいることにも驚いたが、それよりも私はその瞳に吸い込まれるように見入った。



『お兄ちゃん?』

「ああ、すまない。僕は散歩をしているんだよ。君は何をしているんだい?」

『私はね、母様にあげるお花を探してるの!今度妹が生まれるんだ!』



そう言って少女は華のように笑った。
妹が生まれるということは、恐らく貴族の娘なのだろう。
一人で流魂街へ出てくるなど、危険なことをするものだ。



「君、名前は?」

『優奈!暁優奈!お兄ちゃんは?』

「僕は藍染惣右介だよ」

『そう…すけ?』



私は頷いて少女、優奈の頭を撫でた。
それから私は彼女が花を探すのを手伝い、気づけば日が暮れようとしていた。



「優奈、もう暗くなるから帰らないと。瀞霊廷までなら送っていってあげるよ」



空が赤く染まり始めた頃、私は優奈の手を引いて瀞霊廷の門へと向かった。
門の前に着くと、優奈の手を離し背中を押す。



『そうすけは中に入れないの?』

「ああ、僕は入れないんだ。ここでお別れだよ」

『やだ!』



目に薄らと涙を浮かべる優奈。
不謹慎だけれど、そんな姿でさえも綺麗だと思った。
私は優奈の涙をぬぐい、頭を撫でた。



「また会えるよ」

『ほんと?』

「本当さ。約束だ」

『うん!』



そして、再び笑顔になった優奈は瀞霊廷の中へと消えていった。
しかし、その後何年も優奈に会うことはなかった。
暁の名を久しぶりに聞いたのは、流魂街に出てきていた死神からだった。



「なあ知ってるか?中央が暁家をぶっ壊そうとしてるらしいぜ?」

「暁家を?なんでまた」

「なんでも、あそこの姫さんがやべえ力を持ってるとか」

「姫さん?確か、優奈っていったっけな…」



優奈?
自分の耳を疑った。
優奈が危ない、そう思うと足は自然と瀞霊廷の方を目指していた。
その日の夜、瀞霊廷に忍び込んだ私は顔を隠し、暁家の当主の部屋へと侵入した。



「誰だ、貴様は!?」

「暁家は四十六室に狙われています。すぐに姫を連れてお逃げ下さい」

「何を言っておる、貴様など信用できぬわ!」



そう言って、当主…優奈の父親は私に斬りかかってきた。
刀を持ってきていた私は、夢中で振った。
そして、静かになった部屋には動かなくなった当主が転がっていた。
しかしすぐに騒ぎを聞きつけて、大勢の者がやってきた。
私はただ優奈を助けたい一心で、刀を振った。



「君達が私の忠告を聞かないから悪いんだ…」



屋敷中を探したけれど、優奈の姿はどこにもなかった。
しかし、唯一優奈の部屋と思しき場所を見つけ、私は胸元から一輪の花を取り出し置いた。
あの日、一緒に探した花。
優奈が此処に戻って来た時、私の存在に気づいてくれるように。

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