>> 1 私は… 大きな過ちに気付いた時にはもう遅かった。 『乱菊、冬獅郎を呼んできてくれ』 私は一つの決断をした。 その実現のためには彼の協力が必要だった。 「失礼します。暁隊長、俺に何か…」 隊首室に入ってきた冬獅郎は、何かを悟ったようだった。 私が何を言わんとしているのか、そして己のこれからも。 『冬獅郎、卍解を修得まであと少しだな?』 「…はい」 『ならば、これからの十番隊を任せてもいいな』 これは冬獅郎に意見を聞いたのではない。 あくまでも決定事項で、首を横に振ることは許されない、そういった雰囲気を醸し出しながら私は冬獅郎を見た。 まだ幼いその瞳は、何かの決意を秘めたようであった。 「隊長がそうおっしゃるのなら」 聞きたいことは山ほどあっただろう。 しかし、それを聞かずにただ頷いてくれた彼に感謝した。 冬獅郎に話をした翌日、私は一番隊隊舎へと向かった。 用件はただ一つ。 『失礼します、暁です』 隊首室の扉を叩く。 その部屋の主はいつもと同じ心地よい霊圧だった。 「優奈か。今日はどうしたのじゃ」 『死神を辞めさせてください』 その言葉を聞いた瞬間、山じいの顔は険しいものになった。 無理もない、本来自己の都合で死神を、しかも隊長を辞めることなどできないのだから。 「ならぬ」 予想通りの返答が返ってきた。 私は仕方がなく、その場で斬魄刀をすっと抜いた。 『認めてもらえないのならば、ここで私は霊子となります』 自らの身体に刃を突き立てた。 我ながら酷いことをするものだと思った。 それでも…そこまでしてでも私は此処にはもういることはできないと思った。 prev//next back |