>> 1

「優奈サン、ボク…」

『何も言わなくていい。お前のしたことは許せることではないが、私は今も変わらずお前のことを思っている』



ギンの細い眼にうっすらと涙が浮かんだ。
私はやはり、このギンを弟のように大事に思っている、そう改めて思った。



「おや、やっと和解したようだね」



隊首室の扉が開き、惣右介が入ってきた。
その顔にはいつもの笑みをのせて。



『和解?私はお前たちのことを許したわけではない。ただ、私は変わらずにギンのことを弟のように、そして、惣右介のことを友人だと思っているだけだ』



私は惣右介の眼を見てはっきりと言った。
自分の気持ちを再認識すると同時に、今までとまどいがあった自らの気持ちに漸くけりがついた。



『私はいずれ尸魂界を去る』



えっ?と目を丸くするギンのほうを向き、私は言葉を続ける。



『十番隊を任せられるような人物が現れたら、私は引退するつもりだ』



以前から考えてはいたことであるが、漸く決心がついた。
私は護廷にいるべきではない。
五番隊から十番隊に戻ると、隊首室には乱菊が居た。
先日副官に任命した彼女は思った以上に働いてくれている。
若いながらも他の隊士たちからの人望が厚く、十番隊は以前とは比べ物にならないほどに活気づいていた。



「優奈さん、遅いですよー。さっき、朽木隊長がいらっしゃってましたよ」



銀嶺殿が?一体どうしたというのだろうか。
乱菊に遅くなるかもしれないと告げて、私は六番隊へと急いだ。



『失礼します、十番隊の暁です』



隊首室の扉を開くと、そこには隊長の銀嶺殿と、副隊長の白哉がいた。
銀嶺殿の息子、すなわち白哉の御父上が亡くなってから、随分と経つ。
今ではすっかり青年になり、力もつけた白哉が銀嶺殿の補佐として六番隊を取り仕切っている。



「優奈、話があるのじゃが…」

『いかがいたしましたか?』



言いにくそうな顔をして、銀嶺殿は私に腰掛けるように言った。
もしや、あの事件のことか?と不安に思ったが。その不安はすぐに消えた。



「私ももう歳だ。そろそろ引退しようかと思ってな」

『引退?』



銀嶺殿の口から出たのは以外な言葉だった。



『では、次の隊長は白哉に?』

「うむ。そう思ってはいるのじゃが、白哉はまだ若い。白哉が後継者としてその力を十分につけた時に、と思っておる」



そう言って、銀嶺殿は白哉のほうを見た。

prev//next

back
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -