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ギンが死神になって数年が過ぎた。
相変わらず仕事をサボっては私の元へとやってくるギンだが、それでも以前に比べれば真面目に仕事をしているようだった。
そして春、今年も新入隊士の入ってくる季節がやってきた。



『今日からお前たちも死神だ。自覚を持って行動するように』



短い挨拶を終え、私は隊首室へと戻った。
今年はあの子が十番隊に入隊した。
そう、ギンの幼馴染の松本乱菊だ。
一足先に死神になったギンの後を追うべく、彼女も必死に鍛練をしていたようで、その実力は群を抜いていた。



「優奈さん、久しぶり!」



隊首室へと飛び込んできた彼女は、少し見ないうちに少女から女性へと変化を遂げようとしていた。
とはいってもまだ幼く、その笑顔は可愛らしい。



『乱菊、久しぶりだな』

「十番隊に入れてよかったー、此処って入隊試験厳しいって聞いてたから不安だったんですよ?」



十番隊の入隊試験は全て隊長である私が見ている。
斬拳走鬼全てにおいて一定の値をクリアしていないと十番隊には入れないようにしている。
それは隊士自らの命を守るためでもあり、また、私自身が隊士を失いたくないという気持ちであるためでもあった。



「私は七席か〜、ギンに笑われちゃうかな…」



試験においてもその能力を如何なく発揮した乱菊に、私は七の席次を与えた。
それでも新入隊士にしては上のほうで、最初から三席になったギンが異例であるだけなのだ。



『そんなことはない。乱菊はギンのようになるでないぞ』



はーいと生ぬるい返事をして、乱菊は隊首室を出て行った。
ああは言ったものの、乱菊もまたギンと同じようになりそうだと心の中で溜息をついた。
新入隊士の世話は上位席官に任せているため、私の仕事はいつもとそう大差ない。
新入隊士の名簿を見ながら、今年はどれだけの人数が残るだろうかと考える。



『半分残れば良いほうだな…』



十番隊は厳しい入隊試験にも関わらず、殉職する隊士の数が多い。
それと同時に、移隊する数も多い。
それは十番隊に与えられる任務の過酷さが原因であるといえよう。
全ての任務に隊長である私が付いて行ければ良いのだが、そういうわけにもいかずいつも歯がゆい思いをしている。



「優奈サン、何難しい顔してはんの?」



気がつくと目の前にギンの顔があった。
いつの間に入ってきたのだろうか。
そもそも、今日は五番隊も忙しいはず。



『また抜け出してきたのか?』

「まァ、そんなところや。乱菊の顔見に来てん」



乱菊はまだ仕事中だと言うと、終わるまで此処で待っていると言われた。
どうやら、今日は惣右介に怒られないといけないようだ。

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