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怪我も治り退院した後、私は山じいの屋敷にしばらく居ることになった。
私に気を使ってか、毎日のように客が訪れる。



『京楽、山じいに叱られたらしいな』

「浮竹から聞いたのかい?隊首羽織を失くしただけだっていうのにねえ」



相変わらずだな、と笑みが漏れる。
そんな私を見て、京楽は安堵したような表情を見せた。



「山じいが心配してたよ。優奈ちゃんは藍染君と仲が良かったからね」

『気にせずともよいのに。惣右介は私の敵でもあった、ずっと昔からな』



それでも未だに思い出す。
惣右介やギンと共に過ごした日々のことを。
惣右介は私に初めてできた友であり、想い人であった。
しかし、気づくのが遅すぎた。



「泣きたかったら泣いてもいいんだよ?」



去り際に一言呟いた京楽は、私の想いに気づいていたのだろう。
胸が苦しくなった。



『此処は昔と変わらないな』



散歩がてら、十番隊に足を運んだ。
礼儀正しく挨拶をしてくる隊士達の姿を見ると、冬獅郎に十番隊を任せてよかったと思った。
そして、かつて私の部屋であった場所の扉を開いた。
中には冬獅郎と乱菊がいた。



「暁隊長!もう外に出ても大丈夫なんですか?」

「優奈さん!」

『冬獅郎、隊長はよせ』

「じゃあ…俺も優奈さんと呼んでもいいですか?」

『構わぬ』



ソファに座れば乱菊が茶を持ってきた。
以前はこうして惣右介が茶を淹れてくれたな、とまたも思い出してしまう。



「優奈さん、今からどうするんですか?」



また現世に行くのか、ということだろう。
戦いの後、山じいは隊長格に今まで私が現世にいたことを伝えた。
浮竹辺りからは心配したと怒られた。



『まだ決めていない。しかし尸魂界にいるのもな…』



今の私には辛いことなのかもしれない。
どこへ行っても惣右介やギンの面影の残るこの場所は、思い出してしまう。



「隊長に戻られてはいかがですか?」



それまで黙っていた冬獅郎が口を開いた。
三人の隊長が欠けた今、その穴を埋めるのは護廷の急務だ。



『隊長、か…』



東仙やギン、そして惣右介の穴を私が埋めるというのも滑稽な話だ。
そうすれば山じいは喜ぶだろう。
私はどうするべきなのか。
これが私の運命ならば、それを甘んじて受け入れるのもよいのかもしれない。

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