>> 4 怪我も治り退院した後、私は山じいの屋敷にしばらく居ることになった。 私に気を使ってか、毎日のように客が訪れる。 『京楽、山じいに叱られたらしいな』 「浮竹から聞いたのかい?隊首羽織を失くしただけだっていうのにねえ」 相変わらずだな、と笑みが漏れる。 そんな私を見て、京楽は安堵したような表情を見せた。 「山じいが心配してたよ。優奈ちゃんは藍染君と仲が良かったからね」 『気にせずともよいのに。惣右介は私の敵でもあった、ずっと昔からな』 それでも未だに思い出す。 惣右介やギンと共に過ごした日々のことを。 惣右介は私に初めてできた友であり、想い人であった。 しかし、気づくのが遅すぎた。 「泣きたかったら泣いてもいいんだよ?」 去り際に一言呟いた京楽は、私の想いに気づいていたのだろう。 胸が苦しくなった。 『此処は昔と変わらないな』 散歩がてら、十番隊に足を運んだ。 礼儀正しく挨拶をしてくる隊士達の姿を見ると、冬獅郎に十番隊を任せてよかったと思った。 そして、かつて私の部屋であった場所の扉を開いた。 中には冬獅郎と乱菊がいた。 「暁隊長!もう外に出ても大丈夫なんですか?」 「優奈さん!」 『冬獅郎、隊長はよせ』 「じゃあ…俺も優奈さんと呼んでもいいですか?」 『構わぬ』 ソファに座れば乱菊が茶を持ってきた。 以前はこうして惣右介が茶を淹れてくれたな、とまたも思い出してしまう。 「優奈さん、今からどうするんですか?」 また現世に行くのか、ということだろう。 戦いの後、山じいは隊長格に今まで私が現世にいたことを伝えた。 浮竹辺りからは心配したと怒られた。 『まだ決めていない。しかし尸魂界にいるのもな…』 今の私には辛いことなのかもしれない。 どこへ行っても惣右介やギンの面影の残るこの場所は、思い出してしまう。 「隊長に戻られてはいかがですか?」 それまで黙っていた冬獅郎が口を開いた。 三人の隊長が欠けた今、その穴を埋めるのは護廷の急務だ。 『隊長、か…』 東仙やギン、そして惣右介の穴を私が埋めるというのも滑稽な話だ。 そうすれば山じいは喜ぶだろう。 私はどうするべきなのか。 これが私の運命ならば、それを甘んじて受け入れるのもよいのかもしれない。 prev//next back |