>> 2 その後も、やはり私は優奈と会うことはなかった。 優奈は私の事など忘れているのだろうか。 今は護廷の総隊長の家に引き取られていると噂で聞いた。 そして、近々霊術院に入るとも。 「隣、いいかい?」 屋根の上で授業を抜け出している優奈を見つけた。 声をかけてみれば“藍染”と呼ばれた。 彼女は私を覚えてはいなかった。 「僕のことは惣右介でいいよ」 こうして、優奈との新しい日々が始まった。 優奈は幼い頃にも増して輝いていた。 あの真っ直ぐな瞳は健在で、死神となってからも隊長や隊士の皆から好かれていた。 柄にもないが、嬉しかった。 優奈とこうして笑いあえていることが、私の本性を知ってもなお私に笑いかけてくれることが。 けれど、私の中に巣くった醜い感情は止めることができなかった。 『惣右介、平子たちに何をした?お前は一体何をしようとしているのだ』 そうか、優奈はやはり平子達のことが心配なのだ。 そう思うと、余計に彼らが憎くなった。 仲間にならないか、と言えば、答えは否だった。 それからというもの、私達の間には壁ができた。 「藍染隊長、優奈サンには何もせんといて下さいね」 いつだったか、ギンに言われたことがあった。 そんなこと私がするはずがない。 私に弱点があるとすれば、それは優奈だ。 「大丈夫、優奈を傷つけるようなことはしないよ」 あの日、確かに私はそう思っていた。 それなのに、目の前にいる優奈は私に刃を向けていた。 優奈はただ穏やかな時を送りたかったと言った。 しかし、彼女のいうその時の中に私は居なかった。 「私は君を愛しているんだ。あの日からずっと」 地に伏せる優奈に言った。 もう少し、あと少しで私の世界になる。 そしたら優奈を迎えに行くよ。 prev//next back |