>> 3

―冬獅郎side―



どうしようもなく嫌な予感がした。
暁隊長に十番隊を任せると言われた一週間後のことだった。
急いで隊舎へ向かい、隊首室をノックもせずに開ける。



「暁隊長!」



いつものように、“なんだ、冬獅郎か”そう言って迎えてくれるものだと思っていた。
でも…そこには泣き崩れる松本副隊長の姿しかなかった。



「松本副隊長、暁隊長は…」

「いないの…どこにも霊圧を感じないのよ…」



いつもなら隊長が座っているはずのその椅子は空いていた。
いつもなら朝早くから書類が広げられているはずの机上には一通の封筒だけが置いてあった。
手に取り中身を見ると、“十番隊を任せる”とあの日と同じ言葉だけが書かれた紙が一枚入っているだけだった。



―ギンside―



朝早うに乱菊がボクんとこにやってきた。
アイツにしては珍しく目が真っ赤になっとって、一目見ただけで何かあったんやなと思った。



「ギン…優奈さんが…」

「優奈サンがどないしたん?」



胸騒ぎがした。
まさか藍染さんが何かしたんやないかとも思った。
ボクは乱菊の返事も聞かずに五番隊へと向かった。



「藍染さん!優奈サンに何しはったんですか!?」



部屋の主は驚いたような表情をしていた。
それが、ボクがあん人の素顔を見た最初で最後やったと思う。



「優奈がどうかしたのかい?」



それでもすぐに藍染さんはいつもの顔に戻った。
何が…一体何があったんや…
思わずその場に膝をついたボクんとこにやってきたのは一匹の地獄蝶で、ひらひら舞いながら隊首会が開かれることを知らせた。

一番隊隊舎に行くと、そこには既に隊長達が揃っていた。
そして、なぜか今まで優奈サンが居った場所には目を真っ赤にした乱菊の姿。
ボクだけやない、そこに居った者皆が優奈サンに何かあったんや、そう思うとった。



「皆に集まってもらったのは、暁のことじゃ」



重苦しい雰囲気の中、総隊長さんが口を開いた。
そういえば、優奈サンは総隊長の孫娘のようなもんやって誰かに聞いたなァなんて、今更思いだした。



「十番隊隊長暁優奈は病気のため休隊することになった」



病気?優奈サンが?
ボクは信じられへんやった。
最後に優奈サンに会った時はそんな素振り見せてへんやった。



「総隊長さん、暁隊長はどちらで療養してますの?」



精一杯平静を装ってボクは口を開いた。
総隊長さんはちらりとこっちを見たけど、すぐに目逸らしてもうた。



「それは…教えられぬ。面会は謝絶じゃ」



新しい隊長は追って試験を行うとだけ言って、解散になった。
嘘やろ?
ボクもう優奈サンに会えへんの?


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