>> 7 五番隊を出ようとしたところで、惣右介に呼び止められた。 「どうだい?あの三人は」 『なかなかだな。お前のことだ、最初から目を付けていたのであろう?』 そんなことないよ、と言いながらも、口元が緩んでいる。 まるで玩具を見つけた子供のようであった。 「今夜、お邪魔してもいいかい?」 『ああ、何か用意しておく』 部屋へと向かう途中、惣右介の好きなものは何だったかと思い浮かべる。 何も思い浮かばなかった自分に思わず苦笑いしてしまった。 百年以上の仲であるのに、私は惣右介のことを何も知らない。 「優奈さん!」 振り返ると、そこには乱菊と冬獅郎が居た。 『乱菊、冬獅郎の世話を頼んで悪いな』 「いいえー、聞いて下さいよ日番谷ったら…」 「松本副隊長!暁隊長は非番なんですから行きましょう!」 なぜか慌てている冬獅郎は、乱菊を連れて走っていった。 あの二人になら、安心して隊を任せられる、そう思った。 夜、ドアをノックする音に気が付き玄関へと向かう。 「お邪魔するよ」 『どうぞ』 この部屋に来るのは久しぶりだねと言いながら、惣右介は手に持った何かを差し出した。 「手ぶらでくるのも悪いかと思ってね」 『構わずともよかったのに。食事は済んだのか?』 まだだという惣右介を食卓へと誘い、準備していた夕飯を差し出した。 『あまり手の込んだものは作れなくてな』 「十分だよ。君の手料理が食べられるだけで」 こんな言葉を惣右介に吐かれようものなら、誰でもこの男の手に落ちてしまうだろうと思い、思わず笑ってしまった。 そんな私を見て、惣右介も笑う。 「残念ながら本心さ」 『そうか、私は幸せ者だな』 お互いに一線を引いた関係。 それが私達だ。 prev//next back |