>> 4 「いいんですか〜あのまま放ってきちゃって」 『構わぬ。あの少年が決めることだ』 先日出会った霊力の高い少年。 名も知らないが、綺麗な瞳をしていた。 あの日、私は霊術院に入れとだけ言ってきた。 その先はあの少年が決めるべきこと。 『霊術院にも手は回してある。銀髪で碧眼の少年が入学したら知らせがくる』 その知らせは意外にも早くにやってきた。 新入生であり、そして、将来の席官候補になりうるという情報とともに。 『乱菊、散歩に行ってくる』 「散歩ですか!それなら私も一緒に…」 言い終わる前に隊首室には乱菊一人になっていた。 「全く、一人だけ抜け駆けするなんて」 渋々筆を取り、職務の続きをこなす乱菊であった。 『暁だ。先日話した少年に会いたいのだが』 少々お待ち下さいと恭しく頭を下げられると、私は客間に通された。 此処に来るのはギンに初めて会った時以来か、と小さく呟く。 あれからどれほどの時が経ったのであろうか。 「暁隊長、連れて参りました」 言葉とともに入ってきたのは、間違いなくあの時の少年だった。 私は教官に席を外すように言うと、少年に座るように促した。 『久しぶりだな、少年。私は十番隊隊長、暁優奈だ』 「…隊長だったのか」 少年は驚いたような表情をした。 やはり、まだ幼い。 私は思わずギンを思い出す。 『名を教えてくれないか?』 「日番谷冬獅郎だ」 『冬獅郎、か。いい名だな』 冬獅郎が少し微笑んだような気がした。 「失礼ですが、護廷の隊長さんが俺に何の用ですか?」 訝しげな表情で冬獅郎が問うてきた。 無理もない。 まだ入学したての学生に隊長が直々に会いに来るなど、滅多にないことだ。 『用件は一つだ。卒業したら十番隊に来い』 碧い瞳を見開いて、冬獅郎が私を見た。 『お前には素質がある。私はお前に後継者となってほしいのだ』 素質?後継者? 今頃、冬獅郎の頭の中は混乱しているだろう。 私はふっと笑みを漏らして、席を立った。 『いいか、このことは口外するでないぞ。雛森という少女にも、だ』 まだ混乱しているであろう冬獅郎を残して、私は十番隊へと戻った。 prev//next back |