>> 2 それから一年ばかりの時が過ぎ、白哉が隊長に就任することになった。 それと時を同じくして、ギンも三番隊の隊長になることになった。 「お世話になりました、暁隊長」 白哉にそう呼ばれるのも慣れてきた。 彼は緋真の妹、ルキアを義妹として朽木家に迎え入れた。 今は霊術院の学生をしているそうだ。 『今度、緋真の妹に会いに行ってもよいか?』 「はい、きっと喜びます」 ルキアのことを話す白哉は柔らかい顔をしていた。 緋真の妹も、彼女に似て柔らかな空気を持った女性なのだろう。 私は彼女に会いに行くのが楽しみだった。 白哉が出ていった後、バタバタと廊下を走る音が聞こえた。 こんなことをするのは彼女くらいであろう。 「優奈さん!ギンが…隊長になるって本当ですか!?」 思った通りだった。 私は静かに頷くと、彼女が今入ってきた扉を指さした。 「久しぶり、優奈サン」 にこやかに笑う彼は、三の数字の印された羽織りを纏っていた。 「ギン…」 「ちょっ、何泣いとんの乱菊!ボク何かした?ねえ優奈サン!」 ぽろぽろと泣きだす乱菊を見て、慌てるギン。 滅多に見られないその光景に、思わず笑みが零れる。 『泣かせておけ。嬉しいのであろう』 まだ困惑気味のギンの肩にそっと手を置く。 幼かった頃とは違い、がっしりとした肩だった。 これから一つの隊を背負うことになるのだ。 『ギン、道は誤るな』 ギンははっとした顔でこちらを見た。 私が何を言わんとしているのか、わかったようだった。 無言で頷くと、まだ泣いている乱菊をあやすように抱きとめていた。 幸せな時間に、刻々と終わりが近づいていた。 prev//next back |