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「お爺さまが安心して引退できるよう、私も全力で稽古に励みます」



いつの間にこんな大人になったのであろうか。
あのすぐにかっとなる性格の面影はなく、今や六番隊の副隊長として、朽木家の次期当主として、白哉は申し分ない若者になったと思った。



「そこでだ、優奈に白哉の面倒を見てほしいと思ってな」

『私に?』



銀嶺殿も、白哉の実力を承知しているはず。
私など、何の役にも立たないと思うのだが。
そんな私の胸中を悟ったかのように、銀嶺殿は続けた。



「何も、稽古をつけてほしいと頼んでおるわけではない。お主には隊長としてのあるべき姿を白哉に教えてやってほしいのだ」



心が痛んだ。
恐らく、銀嶺殿は長らく副官を置かずに一人で隊をまとめてきたわたしのことを評価してくれているのであろう。
しかし、私は…



『銀嶺殿、申し訳ありませんが、私にはできかねます』

「優奈…いや、暁隊長、私からもお願いできませんか?」



そう言って、白哉が深々と頭を下げた。
人に頭を下げる姿など、初めて見た。
それでも、私にはどうしてもこの役が務まるとは思えない。



『しばらく考えさせてください』



一言いって頭を下げると、私は部屋を出た。
六番隊を出た私は、隊舎へは戻らずに、ある場所へと来ていた。
此処はあの頃と何も変わっていないはず。
しかし、今の私に見える景色はあの頃のように澄んだものではなく、薄暗くそして濁っているように感じる。



『変わってしまったのは私、か…』



口から出た言葉は宙に消えた。



「こんなところで何をしているんだい?」



突然の声に驚いて振り向くと、いつもの笑顔を浮かべた惣右介が立っていた。
私は無意識に彼から少し距離をとった。



「心配しなくても、私は君を手にかけたりはしないよ」

『…すまない』



謝罪の言葉の後、私は惣右介に促された彼の横に腰掛けた。
こうやって二人で方を並べるのは何年ぶりであろうか。
霊術院時代は、こうして後者の屋根の上でよく話をしたものだ。



「懐かしいね、こうやって話をするのは」



私の心を見透かしたように、惣右介は笑った。
私はただ、頷いた。
すると、惣右介の大きな手
が私の頭の上に置かれた。
温かい体温が伝わってくる。



「君は、あの頃のままだよ」

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