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さらに時は経ち、あの事件のせいで多くの隊長を失った護廷十三隊も、徐々に立ち直ってきた。
ニ番隊の隊長に砕蜂が、七番隊の隊長に狛村が、九番隊の隊長には東仙が任命された。
この東仙があの事件の時に居た九番隊の隊士であるということに気が付くのにそう時間はかからなかった。
あの事件を引き起こした三人が順調に出世しているのかと思うと、言いようのない気持ちになる。
しかし同時に、それをわかっていながら何もできない私自身にも腹が立った。



「漸く副官を置く気になったそうだね」



ノックもなしに隊首室へと入ってきたのは惣右介。
時が経ったからであろうか。
惣右介と私は以前のような友人関係に戻っていた。
それが上辺だけのものであることは双方が承知していたことではあるが。



『後継者を育てようと思ってな』

「後継者?」



あの事件以来、私はこの護廷に居ることが辛くなった。
悪く言えば、逃げ出したいと思うようになった。
元はと言えば、妹である鈴のために強くなろうと思っていたのに、その鈴はいなくなった。
そして、弟のように可愛がっていたギンもあのような事件を…



『わからぬか?私は隊長として失格だ』



驚いたような、どこか悲しげな顔をした惣右介であったが、私にはその表情すら作り物のように思えた。



「それで松本君を副隊長にか」

『そうだ。乱菊には十分な素質がある。いずれは彼女に隊長の座を譲ろうと思っている』



そうか、と一言だけ言うと、惣右介は机の上に何かを置いて去っていった。



『手紙、か?』



惣右介が置いていったのは、丁寧に封筒に入れられた手紙だった。
中を見ると、そこには見覚えのある文字。



『ギン…』



差出人はギンだった。
もう何年顔を見ていないのだろう。
乱菊からその様子を聞くことはあるが、私とギンが顔を会わせることはなかった。



『莫迦者が…』



内容は他愛もないことだった。
彼の近況や乱菊とのこと、なぜこのような手紙をと思っていると、最後の行に驚かされた。
私は急いで五番隊へと向かった。



『失礼する。市丸は居るか?』



五番隊の隊首室に居たのはギンだけだった。
驚いたような顔でこちらを見るその姿は、もはや少年というには大人びていて、噂通りの立派な青年となっていた。



「優奈サン!」



久しぶりに見るその笑顔は、幼い頃のままだった。
私はギンの前に立ち、その頬をはたいた。
あの日のように。



『莫迦者、何故、何故…』



赤くなった頬を機にすることもなく。ギンは笑顔のままで私を見た。



「優奈サン、誕生日おめでとう。何年も言えへんですんません」



その日は私の誕生日だった。
手紙の最後に書かれていたのは、祝いの言葉であった。


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