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一番隊に集まったのは、何とも少ない人数であった。
もっとも、先の事件の所為で、隊長自体が少なくなったためであるのだが。



「諸君、今日は新しい隊長を紹介する」



山じいの声とともに、部屋の扉が開いた。
その先に居たのは惣右介と涅だった。



「見ての通り、五番隊隊長に藍染惣右介を、十二番隊隊長に涅マユリを、その任に就かせることと決定した。異論のある者は居るか?」



一瞬、山じいと目があった気がした。
異論…今ここで私が異論を唱えたとて、きっと意味のないものと終わるであろう。
私は目を閉じて、先日見た光景を心の内に秘めることとした。



「優奈」



隊首会の後、声をかけられ振り返ると惣右介が居た。
警戒心を抱きながらも、私は足を止めた。



『隊長になりたかったのか?』



そう問うと、惣右介はふっと笑みを漏らした。



「いいや、あのまま待っていても、いずれは私に隊長の座は用意されたはずさ」

『それならば何故あのような…』

「君にならわかってもらえると思っていたのだがね。それにしても、何故、僕をあの事件の犯人として突き出さなかったのかい?」



穏やかな笑みを浮かべる惣右介であったが、その眼は鋭く冷たい光を発していた。



『ただの気まぐれだ。それに、私が言ったところで、誰も信じはしないであろう』

「“総隊長の孫”の君が言っても?」

『関係のないことだ。良い機会だ、この場ではっきりさせておく。私はお前たちの仲間になるつもりはない。しかし、お前たちのことを密告する気もない』

「それはありがたい。私としても、君を手にかけるのは心が痛むからね」



本心からの言葉かそうでないのか、真実はわからないが、惣右介は悲しそうな顔をして笑った。
私も、自分で何故あのようなことを言ったのかわからない。
私の“友人”と呼べる数少ない人たちを、目の前の男は一気に消してしまったのだから。
その後、私はあまり人と接触することがなくなった。
仕事以外で会話を交わすといえば、乱菊ぐらいであろうか。
おかしなものだ、仕事をサボるのに自隊の隊長の元へとやってくるのだ。



『乱菊。あまりサボっていると、怒られるぞ』

「平気、ちゃんと仕事はやってるもん」



つくづく要領の良い子だと思う。
毎日のように隊首室にやってくる癖に、腕は立つ。
もう入隊して数年になるのか、月日の経つのは早いものだと思いながら、美味しそうに菓子をほおばる乱菊に目をやる。



「優奈さん、元気そうでよかった」


突然何を言い出すのかと不思議に思えば、乱菊はにっこりと笑った。



「ほら、優奈さん浦原隊長とか平子隊長と仲がよかったんでしょ?それで、ギンが心配してさ」

『ギンが…?』



あの日以来、ギンは私の前に姿を見せなかった。
副隊長になったギンは、噂によれば背も伸びて、下級隊士のみならず憧れの的となっているらしい。



「そうよー。アイツ、自分にはどうしようもないからって私に優奈さんのこと頼むってさ。まったく困ったもんよねー」



ギンなりに気を使っているのだろうか。
それとも、ただ私に会わせる顔がないと思っているのだろうか。
どちらにしろ、今の私たちの間には深い溝がある。
それは惣右介との間にもだ。

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