>> 5 「優奈、私は君と戦いたくないんだ。仲間にならないかい?」 仲間とは一体なんだ。 私にこの尸魂界に盾突けというのだろうか。 育ての親である山じいも、今まで良くしてくれた京楽さんも浮竹さんも、皆を裏切れというのだろうか。 「返事はすぐにとは言わないよ。君は今日何も見ていない、待機命令に従い隊に居た、そう思えばいい」 ふっと笑うと、惣右介達は去っていった。 私も、何だか此処に居てはいけないような気がして隊舎へと戻った。 次の日、喜助と鉄裁が逃亡したとの連絡が入った。 “実験台”とされた五人の隊長格を連れて。 そして、その幇助をした夜一さんも姿を消した。 何だろう、何故だか一気に世界が白黒になったような気がした。 妹を失って一度色を失くした私の世界。 再び色づき始めたと思っていたのは勘違いであったのだろうか。 とっくに失ったと思っていた、人を失うことの悲しみを再び突き付けられている私の元に、訪問者が現れた。 『ギン…』 隊首室に訪れたのはギンだった。 まるでどこかで悪さを働いてきた後の子供のような、そんな顔をしていた。 もっとも、実際そうであるのだが。 「優奈サン…」 ギンの言葉はそれ以上続かなかった。 いや、私が続けさせなかった。 私はギンに近づくと、その頬を思いきりひっぱたいた。 『お前たちが何をしようとしているのか、私にはわからない。いや、わかりたくもない。惣右介に伝えておけ、私はお前たちの仲間にはならぬ、と』 ギンはその言葉を聞いて、うっすらと涙を浮かべながら出て行った。 ちくちくと心が痛むような気がした。 しかし、私にはこうする他なかった。 仮にも一隊を預かる隊長である私に、他の道などとれるはずもなかった。 『一体どうなっているのだ…』 それから数週間が経った。 “仲間にはならない”という私の言葉を聞いたはずの惣右介は、何もしてこない。 顔を会わせてはいないが、自らの秘密を知られたからには、私を抹殺しようと動くはずであろうと思っていたのだが。 「各隊隊長に通達します。隊首会を執り行いますので、至急、一番隊にお越しください。繰り返します…」 ひらひらと地獄蝶がやってきて、隊首会を知らせた。 また何かあったのだろうか。 私は急いで一番隊へと向かった。 prev//next back |