>> 3 結局対処のしようもなく、私はいつものように執務をこなしていた。 こんな時、副官でもいれば仕事を任せて事件について調べられるのにと思う。 はあ、と溜息をついたところで、隊首室のドアをノックする音が聞こえた。 『入れ』 失礼しますという声とともに入ってきたのは乱菊だった。 そういえば、最近ギンが来てないなと思う。 やはり、昨日のあの実験の所為なのだろうか。 ギンは、惣右介は一体何をしようとしているのだろうか。 「暁隊長、最近ギンの様子がおかしいんです…」 乱菊は珍しく神妙な顔つきをしていた。 可愛い幼馴染にこんな顔をさせるなど、ギンもまだまだ子供だ。 『乱菊、二人の時はいつもの呼び方で構わない。ギンがおかしいとは、どういうことだ?』 「前みたいに頻繁に私のところに来ることもなくなったし、どこかよそよそしいっていうか…」 やはり、乱菊も何も知らないのか。 しかし此処で乱菊に昨日目にしたことを話すわけにもいかず、私は努めて優しい顔を作る。 『ギンも忙しいんだ。気に病むことはない』 「そうですか…」 納得していない様子だったが、これ以上私に何を言っても無駄だと思ったのか、乱菊は隊首室を出ていった。 その後も職務に集中することができず、気づけば外は暗くなっていた。 そろそろ帰るか、と支度をしていれば、警鐘が鳴り響いた。 ―緊急招集!九番隊に異常事態発生!隊長は至急一番隊隊舎へ… 『六車と久南が…?』 隊長と副隊長の霊圧が消失するなど、一体何が起こったのだろうか。 とにかく、急いで一番隊へと向かった。 隊舎に着くと、既にほとんどの隊長が来ていた。 山じいの話によると、今朝平子から聞いた事件の調査に向かっていた九番隊の部隊に異常が起きたらしい。 すぐに隊長格五名が現地へと向かうことになった。 『平子…気をつけろ』 「なんや、心配してくれとんのか?心配せんでも拳西かて隊長や。ちゃっちゃと終わらせてくるわ」 選出されたのは三番隊の鳳橋、五番隊の平子、七番隊の愛川、副鬼道長の有昭田、それに八番隊副隊長の矢胴丸だ。 私は待機していろとのことだったので、隊首会が終わると再び隊舎へと戻った。 『やはり、惣右介が…』 この件に惣右介が絡んでいると見て、まず間違いはないだろう。 問題は、なぜこんなことをするのかだ。 嫌な予感がする。 居てもたってもいられなくなり、私は隊舎を出て流魂街へと向かった。 prev//next back |