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とりあえず隊舎に戻ってきた。
気を落ち着かせる為に苦い茶を淹れる。
一口含めば、幾分かすっきりした気分になった。



『なぜわざわざ自分の身代りを…?』



考えても答えなど出るはずもなく、気づけば夜になっていた。
やはり、惣右介本人に問い詰めるのが良いだろうと霊圧を探る。
瀞霊廷内には霊圧を感じない。
気は進まないが流魂街へと出て行く。



『何故こんな遠くまで…』



微かに感じた惣右介の霊圧。
しかし、それ以上に私を驚かせたのはもう一つの霊圧だった。
自身の霊圧を抑えて瞬歩で向かう。
辿り着いた先で目にしたのは、流魂街の住人だろうか、人が消えていく様。
それを眺める惣右介と、恐らく九番隊の隊士。
そして…ギンの姿だった。



「如何………実験………されますか?」

「いや、このまま続けよう…」



途切れ途切れではあるが確かに聞こえた会話。
実験とは一体なんのことなのだろうか。
目の前で消えたあの人たちが実験台と考えればつじつまが合う。
一体なんの実験なのだろうか。
頭の中で様々な感情や考えが混じり合う。
とにかく此処に居てはいけない、そう本能が訴えかけてくるような気がして、私はその場を後にした。

自室に戻り布団に入るも、先ほど目にした光景が頭から離れない。
気づけば日が昇り、辺りは明るくなっていた。
仕事をサボるわけにもいかないので、死霸装に着替えて外に出る。
隊舎へと向かう道すがら、会いたくない人に出会った。



「優奈、おはようさん」

『平子か、おはよう』



へらっと笑って平子が挨拶をしてきた。
その後ろにいるのは、やはり惣右介ではない死神。
言うべきか否か、迷ったが言ったところで平子には惣右介に見えているわけで。
どうにもしようがなく、平然を装う。



「そや、昨日卯ノ花隊長になんや奇妙な話聞いたで」



奇妙な、とは一体どんなことなのだろうか。
まさか、昨日私が目にしたあの“実験”のことだろうか。



「最近な、流魂街で人が消えとるらしいで」

『消える?』

「そや。服だけ残して跡形もなく消えてまうらしい」



“消える”
その言葉を聞いた時、脳裏に鮮やかによみがえったのは昨日見た光景。
間違いない、惣右介たちの仕業だ。



「どうかしたか?」

『いや、なんでもない。喜助にでも聞けば何かわかるかもしれないな』



せやなァなどと言いながら、平子は後ろ手にひらひらと手を振って去って行った。
私に小さく会釈をして去っていくのは惣右介になりすましている死神。
私が気づいているなど思いもしないのだろう。

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