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その日の業務が終わると、私はすぐに十二番隊へと向かった。
隊首室に行くと、どうやら部屋の主は技局に居るようで、今度はそちらに向かった。



「優奈!久しぶりやな!」



私を出迎えてくれたのはひよ里だった。
どうやら平子が言っていたことは真実のようで、喜助のところに行くまでに愚痴を延々と聞かされた。
喜助が居るという部屋の前に着くと、ひよ里は一人で入れと言って去って行った。



『喜助、入るぞ』



部屋の中に入ると、何やらいろいろな機械が置いてあった。
見慣れないものが並べられていて、私は辺りを見回しながら喜助に近づく。



「優奈サンが此処に来るなんて珍しいっスね。どうしたんですか?」



ずっと此処に籠っていたのだろう、髪もボサボサな喜助を見てこみ上げる笑いをこらえる。
そして、先ほど遭遇した虚について聞いてみた。



「気配を消せる虚っスか…興味深いですね」

『虚は自ら特殊な能力を持つように進化することがあるのか?』

「ないとは言い切れないっスけど…」



何かを含んだような喜助の言い方に、私は彼が自分と同じ考えであることを悟った。
しかし、あえてそれを口にはせず、喜助の手の中にあったものに私の目はいった。



『それは何だ?』

「これっスか?完成したばかりなんですよ」



そう言って、喜助はその小さな物体について説明してくれた。
その物体は死神と虚の境界を瞬時に破壊、創造するらしい。
名を崩玉というらしい。



『物騒なものを作ったものだな』

「僕もそう思います。危険な物質なんスよ」



喜助は結界を張り巡らせた箱の中に崩玉という物体を入れると、このことは内密にと言った。
四十六室にでも知られたら面倒なことになりそうだ。



「せっかく来たんですし、お茶でもどうっスか?」



喜助に誘われて客間へと向かう。
怪しげな雰囲気の漂う技局だが、客間は至って普通だった。
お茶を持ってきたのは小さな子供。
鋭い目つきで私を見ると、目の前にお茶を置いた。



「阿近、挨拶しなさい」



阿近と呼ばれたその少年は、一瞬顔をしかめて私にお辞儀をした。



「阿近です、十番隊の隊長さんですか?」

『ああ、よろしくな』



小さな少年の頭を撫でると、少年は用は済んだとばかりに足早に部屋を出て行った。



『阿近といったか、あの少年もあそこから連れて来たのか?』

「はい。まだ幼いですけど、才能はあります。マユリさんにも懐いているようですし」



苦笑しながら喜助は茶に手をつける。
あの涅に懐くなんて不思議な子供だと思いつつ、私も茶に手を伸ばした。



『喜助、先ほどの虚の件なんだが…』

「人為的なものじゃないかって思ってるんでしょう?」



やはり、この男も同じことを考えていた。
私は静かに頷くと、茶をすすった。
惣右介のことを言うべきか否か迷ったが、根拠のないことで彼を疑いたくはなかったので黙っておくことにした。



「少し調べてみます。この次同じような虚が現れれば決定的になるんですけどね」



それから、その話は終わりにして他愛もない話をした。
相変わらず砕蜂は夜一さんにいつもくっついているだとか、ひよ里と涅の仲が悪いだとか、どうでもいいような内容ではあったが久しぶりに喜助とゆっくり話をした気がした。



『もうこんな時間か』



気がつけばとうに日は暮れていて、そろそろギンが来るころかも知れないと思い、私は技局を後にした。

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