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『喜助、隊長職は楽しいか?』

「もちろんっス、優奈サンは楽しくないんですか?」



喜助らしい答えだと思った。
事実、この男は隊長になってから研究に特化した技術開発局なるものを作り、そこで日夜研究に明け暮れている。
一方の私はどうだろうか。
隊長として何か山じいの役に立てたことがあったのだろうか。



『私は…もし、他に隊長に相応しい力を持った者が現れれば隊長職を譲るつもりだ』

「またまた御冗談を。そんなのあと百年くらいは無理なんじゃないっスか?」



けらけらと笑う喜助を私はじっと見た。
冗談ではなく本気だということを訴えるかのように。



「…そんな日が来ないことを祈りますよ」



にっこりと微笑むと、喜助は部屋を出て行った。
私は残った書類を片付けるために机に向かった。
ギンが来る前に終わらせてしまわねば。



「優奈サン、入るで」



いつものように勝手に部屋に入ってくるギン。
しかし、その日は様子が違った。
後ろに綺麗な金髪の少女を連れてきたのだ。



『ギン、その子は誰だ』

「乱菊いうんや、ボクの幼馴染」



紹介されたその少女はぺこりと頭を下げた。
よく見ると整った顔立ちをしている。
この少女はギンの恋人か何かなのだろうか、まだ子供の癖にやるなと思わず笑みが零れる。



「優奈サン、乱菊は恋人やないで」



私の心を見透かしたかのようにギンが言った。
すると、乱菊という少女が漸く口を開いた。



「ふーん、この人がアンタが言ってた優奈サンねえ…」



品定めするような目つきで私を見る。
居心地の悪くなった私は、思わず少女を睨みつけてしまった。



「優奈サンも乱菊もやめてや。ボクが優奈サンの話ばっかりするもんやから、乱菊が会いたいって言い出したんや」

「思ったより全然綺麗な人じゃない。強いって聞いたからもっと怖い人なのかと思ってた」



先ほどとは打って変わって綺麗に笑う少女。
きっと明るい子なのだろう、私とは正反対だ。



『おい、今日は二人とも稽古するぞ』



ギンと乱菊を連れて、私はいつものように稽古場へと向かった。
それから時々、ギンと一緒にこの少女も私の元を訪れるようになった。

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