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「少年の調子はどうじゃ?優奈が刀を開放したと聞いたがのう」



それから数日後、私は山じいに呼ばれて屋敷に来ていた。
結界を張っていたとはいえ、やはり山じいには私が斬魄刀を開放したことはバレていたらしい。



『許可も得ずに刀を開放して申し訳ありません』

「謝らずともよい。それだけお主があの少年に目をかけておるということじゃろうて」



そう言って微笑む山じいの前では、私もまだまだ童といったところだろうか。
山じいは席を立つと私を庭に案内した。



「今日は銀嶺殿が来るからの。白哉坊の相手をしてもらえぬか?」



その直後だった。
背後に何者かの気配を感じた。



『何だ、私に奇襲をかけようとでも思うたのか?白哉』



その人物の腕を掴むと、その人物…白哉は罰の悪そうな顔をした。
その後ろから銀嶺殿がゆっくりと歩いて来る。



「これ白哉、先に挨拶をせぬか」

「…お久しゅうございます、総隊長殿」

『何だ、私に挨拶はないのか?』



そう言ってやれば、白哉は拗ねたような顔でそっぽを向いてしまった。



「やれやれ、相変わらずじゃのう」



呆れる山じいと銀嶺殿は部屋の中へと入り、私と白哉は庭に残された。



「優奈、最近霊術院の学生の稽古をしておるそうだな?」

『白哉の耳にも入っておったのか。ギンは強いぞ?白哉もすぐに抜かされるやもしれぬな』



冗談混じりに言うと、白哉がいきなり木刀で斬りかかってきた。
私はそれを薙ぎ払いながら攻撃をしかける。
部屋の中からは山じいと銀嶺殿がこちらの様子を伺っていた。



「あの少年を優奈に任せて良かったですな」

「そうじゃな。あの子も優奈も見違えるようになった。特に優奈は…少しずつ昔の顔を取り戻しておる」



そんな会話の内容が聞こえるはずもなく、私はただ白哉の稽古に付き合っていた。





「暁隊長、お客様です」



ある日、隊士が珍しく隊首室に現れたと思ったら、客だと言って十二番隊の隊長を連れてきた。



『喜助か。何用だ?』

「別に用なんかないっス。優奈サンの顔を見にきました」



喜助は勝手に部屋の中を歩き回り、茶を淹れて私の机にも湯呑を置いた。



『すまぬ』

「いいんっスよ。ところで優奈サン、副官置かないんっスか?」



私は隊長になってから今まで一度たりとも副官を置かなかった。
特にこれといって不都合があるわけでもなく、この状態に慣れていたので今更副官を置こうという気にもなれなかった。



『必要ない。私一人で事足りている』

「でも、藍染サンが心配してるって平子サンから聞きましたよ」

『惣右介が…』



あの者のことだ、どうせ友人思いの自分を演出するために平子にそのようなことを言ったのであろう。
そうか、とだけ言うと、私は喜助の淹れてくれた茶に手を伸ばした。

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